帝国データバンク(TDB、東京都港区)が6月5日公表した、2024年5月の景気動向調査結果によると、景気DIは前月比 0.6ポイント減の43.5となり、2カ月連続で悪化した。国内景気は個人消費が低迷したことや、原材料価格の高止まりによるコスト負担増などにより後退。「2024 年問題」への対応に伴うコスト負担増、不十分な価格転嫁なども景気を下押する要因となった。今後の景気は横ばい傾向で推移すると予想されており、実質賃金のプラス転換が鍵となるもよう。
「建設」は46.0(前月比0.6ポイント減)で4カ月連続の悪化。「仕入単価 DI 」や「雇用過不足 DI」 が高止まりする中、企業からは「原材料費の高騰を売価に反映させづらい状況」(土工・コンクリート工事)、「仕事自体はあるが、人材不足により受注の機会を逃している」(一般土木建築工事)などの声が寄せられた。各地で「公共工事が少ない」との声がある一方、半導体関連工場の進出による各種工事や再生エネルギー関連の引き合いの増加、ホテル関連の設備投資などが好材料となっている。
規模別では、「大企業」のうち『建設』のDIが5カ月ぶりに40台に落ちた。「資材の高騰でゼネコンの予算内に入れることが難しい」などの声も上がっている。「中企業」では、住宅販売低迷のあおりを受け、『家具類小売』や『家電小売』が悪化。「小規模企業」では『不動産』が、販売長期化で在庫が増加し下落した。地域別では、『近畿』『四国』『北陸』など10地域中9地域で悪化。『中国』のみ改善した。このうち『北陸』は予算が復旧・復興に回り、震災関連以外の公共工事入札件数が減ったとの意見があった。
仕事増加も運搬費増で打撃
個別のコメントでは、「良い」と判断した理由として、「鉄道関連の公共事業の増加に加え、国内再生エネルギー関連工事も増加している」(土木工事)、「ラピダス進出により不動産バブルが発生している」(建築工事)などの声が聞かれた。「悪い」とした理由では、「資材高騰により、工事量の減少や工事の見直し・延期が発生している」(鉄骨工事)といった声が上がった。
先行きについては、「良い」とした理由では「コロナ禍によって止まっていた案件が動き出したり、万博、IRなどで仕事がたくさんある」(一般管工事)、「どちらでもない」とした理由では、「仕事は増加したものの、資材や運搬費の値上げが響いている」(防水工事)、「悪い」とした理由では、「資材価格や労務費の高騰で建築自体の中止案件が散見され始めている」(型枠大工工事)などが見られた。
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