建設資材メーカーの岡部 (東京都墨田区)は6月4日、ブルーカーボン事業に参入し、島根県隠岐郡海士町の海域に実験施設となる「多段式養殖施設」を設置したことを明らかにした。CO2の効果的な固定方法の検証試験を2023年9月から開始している。
ブルーカーボンは、沿岸・海洋生物により吸収・蓄積される炭素。海草藻場やマングローブ林などで光合成により吸収された二酸化炭素が海底に貯留されることから、陸上の森林(グリーンカーボン)とともにCO2吸収源として期待されている。
同海域は海藻の種類が豊富で、浅場から30m以上の深場に大型の藻場が形成された一帯でもあることから、海藻類の養殖に適している。同社はここに3段の多段式養殖を行い、生育水深が異なるコンブの仲間から、より多く収穫できる組み合わせを検証している。
現在は、上段にワカメ、中段にワカメ雑種(ワカメとアオワカメの交雑体)、下段に根から新芽を発生させて増殖する日本海特産のツルアラメを養殖。これら3種類は、それぞれ生長が最大となる時期や収穫時期が異なるため、作業分散をしながら生産効率の検討を行う。
他にも、隠岐諸島沿岸にはコンブの仲間よりも大型になるホンダワラ類(大型褐藻類)が生育しており、複数種類の養殖の有効性を検証中。優れたCO2吸収量が見込めることから、食用、工業原料、建材など、さまざまな用途に活用を広げる考え。
同社は、1992年に島根県隠岐の島町で海藻の増養殖技術の開発に着手。2002年に拠点を隠岐郡海士町に移し、2012年には「応用藻類学研究所」を開設した。藻場の造成や保全に関する技術開発、磯焼け対策、藻場造成に取り組んできた。こうした海洋環境保全活動を通じて、SDGs目標「14.海の豊かさを守ろう」に挑戦。環境に配慮した製品開発・製造に取り組んでいる。
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