前回の連載(#7)の最後で、「BIMソフトで一貫というフローではなく、今使っているソフト中心で、かつ最初は旧式の2D図面のやりとりも含まれても構わない。可能な限りステップ・バイ・ステップで情報化を進めていけば良い」と書きました。
とはいえ、「情報化」していくための基本のソフトウェアとしてはやはりBIMソフトに一日の長があります。2D-CADでは「情報化」に限界があります。それはどこまでいっても人が脳内で情報に変換するための画像でしかないからです。
そこでBIMソフトを導入し、「よし、BIM化だ!」とスタートを切ることになるわけですが、ここでさまざまな課題に直面します。
立ちはだかるさまざまな課題
BIMソフトは価格的にも高いので、いきなり出だしで導入コストの高さに躊躇してしまいます。また、導入後にも2D-CADとは比べ物にならない運用コストがかかります。モデル作成や図面化にあたり、「テンプレート」や「3D部品(ファミリ)」といったものを準備する必要があるのですが、初心者がそれらを独自に準備するのは大変です。
そしてBIMの真骨頂はデータ連携にあるのですが、各種プロパティの設定が後の工程でどのように利用されるかを計算して設定していくことはかなりの上級編です。また、入力作業効率を上げることも大事なのですが、ソフト標準のツールではなかなか思うようにいかないこともあり、ソフトのカスタマイズも重要性を帯びてきます。
困難を解決する「木造版BooT.one」
そこで弊社は、これまでBIMソフトで設計業務を行うことで感じている上記のような問題点を解決すべく、「テンプレート」「ファミリ」「ツール」の3つについて実績のある応用技術用の「BooT.one」を拡張する形で、木造建築物に対応する開発をスタートしました。
昨年11月に行われた〈Insight&Solution Seminar 2023〉でその開発概要とロードマップを発表させていただいたのですが、木造建築の業務フローを分析/再構築し、作業効率の向上が確実に狙える「BooT.one」環境と融合させ、多くの人に利用することで更に集合知としての情報が蓄積されていくことを目指して、木造およびBIMの普及に貢献していきたいと考えております。
これらの「テンプレート」「ファミリ」「ツール」に加え「ガイドライン」つまり、どのようなフローとルールで建物情報を作成・運用していくのかが定まってはじめてBIMといえます。「よし、BIM化だ!」と決意したあと、その準備に時間がかかってしまいます。そこをスキップするためのツールが「木造版BooT.one」で、どのようにすればBIMを自社で運用できるようになるかをスキップするために我々のようなBIMコンサルタントが存在するというわけです。
BIMで業務フローを回す仕組みが一旦できれば、作業効率が上がり、出来たデータを用いて様々な分析ができ、一段階上のフェーズへと進みます。「AIを用いた設計の自動化」「建物データを用いたファシリティマネジメントによる収益性の向上」などなど。
木造においても、その未来に向けて足元から準備していかなければならず、弊社はその一端を担うべく地道な開発を進めていきたと考えております。(次回へつづく)
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