総務省がこのほど実施した「建設残土対策に関する実態調査」(2021年12月)のフォローアップ調査で、都道府県・市町村などによる建設発生土の有効利用や適正処理への対策が大きく進展していることが分かった。搬出先の明示は、全都道府県、95%の政令市、約81%の市区町村で実施。運搬費などの計上は、全都道府県・政令市と約93%の市区町村で実施されるようになった。発生土の情報共有により、処分費や不足土の購入費などが不要となり、大幅なコストダウンを実現した事例も報告されている。
21年の実態調査時には、全都道府県や市町村の7割近くで、不適切な建設発生土の埋立て事案(120事案)を確認。建設発生土の有効利用ができていたのは都道府県の3割、市町村の1割に満たないという状況だった。この課題に対し、国交省では発生土の工事間利用を進めるため、公共工事・民間建設工事の「標準請負契約約款」を改正。保管場所を把握・整理すること、搬出状況などを発注者が確認できる仕組みを廃棄物備することなどを地方公共団体などに要請した結果、建設発生土の適正処理が着実に進展したという。
情報交換システムで利用を促進
建設発生土の有効利用に向けた取り組みでは、各地方整備局内で建設発生土の保管状況などを整理した一覧表や、有効利用を促すための「建設発生土の利活用事例集」を作成。これらをもとに民間企業を含めた他機関間で発生土の利用調整が進められた。例えば栃木県では、佐野市の保育所建築工事で発生した土を、約15km離れた足利市の道路改良工事の盛土に利用。盛土材の購入費が不要となったことから、290万円のコストダウンにつながったという。ともに「建設発生土情報交換システム」に登録していた。
また長野県では、上田市の土地造成で発生した土(約14万㎥)を、県が実施する「ため池」改修の耐震補強に用いた事例が報告されている。
その一方で、国交省が作成した「建設発生土の利活用事例集」の中に参考にできる例がない、一覧表に近隣の保管場所が掲載されていないなどの声もあることから、利活用事例の収集・公表や一覧表の更新に努めたいとしている。
運搬費などは事前に調整
建設発生土の運搬費については、指針の変更により予定価格として積算することや、仕様書で搬出先の所在地を定めることが示されている。前述の長野県の例では、土の発生側(上田市)が工事現場での土砂の積込み費を、利用側(長野県)が工事現場までの運搬費、土質調査費、利用工事現場での土砂の整形費、敷ならし費を負担することで調整が成立している。
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