「ものづくりがしたい」。それまでゼネコンやFCの加盟店に勤務していた遠藤遼平さんは、そんな思いに駆られてスリートラスト工務店(福島県会津若松市)を立ち上げた。地縁や人脈にも恵まれ順調に成長したが、先輩経営者や仲間の薫陶を受け、現在は棟数を制限して「自分がいいと思える家」を提供するために研鑽を重ねる。【編集部 荒井隆大】
1982年生まれの遠藤さんは、地元の工業高校で建築を学び、卒業後は地場ゼネコンに入社した。“コンクリートから人へ”が叫ばれる中、希望とは異なる土木部門に配属され、6年間施工管理に従事した。その間も建築への思いは消えず、建材店の住宅部門へと転職し、さらにグループ会社のビルダーに移った。
ここで遠藤さんは独立のきっかけをつかむ。人事異動を契機に、福島県内の支店にいた同僚4人と工務店を立ち上げることになったのだ。社名は「スリートラスト」。遠藤さんは設計を担当することに。
当時はFCに加盟していたが「FCの家づくりにうまくなじめなかったし、売上よりもものづくりを大事にしたかった」という遠藤さんは2018年、単身独立を決意。のれん分けのイメージで社名を借用し、スリートラスト工務店を設立した。
好調だったからこそ悩み、原点に返る
幸い、独立した遠藤さんのもとには戸建て住宅のほかアパートや店舗、中古住宅の改修など、さまざまな仕事が舞い込んだ。高断熱住宅にも取り組み、2期目は新築7棟で売上2億2000万円、3期目には12棟 ・2億8000円と、業績は伸びる一方だった。
順風満帆に見える成長ぶりだが、遠藤さんはふと立ち止まって考えた。「このままでいいのだろうか」。広告で新規の顧客も獲得できているし、顧客満足度も高いはずなのに、行き詰まりを感じて経営に悩む日々が続いた。
2021年の秋、そんな状況の中で、新建ハウジング主催の「若手工務店経営塾」に参加。その席上で、ある人から“遠藤さんは何が楽しくて工務店をやっているのか?”と声をかけられる。かなり厳しい言い方だったが、夜になってその言葉を反すうしていると「“1棟ずつ、いいものをつくりたい”という独立当初の気持ちが蘇ってきた」という。
心機一転、遠藤さんは原点に立ち返り・・・
この記事は新建ハウジング5月30日号20面(2024年5月30日発行)に掲載しています。
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