ドイツの工務店は、1人親方の個人事業主から従業員30人くらいの比較的大きな会社まで、CLTや土壁など特殊な工法に特化した会社から、大型建築から戸建て住宅、新築からリフォームと、いろんな工法をオールラウンドにできる会社まで、多様な形態がある。今回は、フライブルク市にあるちょっと変わった工務店、タカツカ建設(TAKATUKABAU)を紹介したい。
タカツカ建設は、大工マイスターのヨハネス・オットが2017年に設立した若い会社だ。社名のタカツカは日本語のようだが違う。スウェーデンの有名な子ども向け小説「長くつ下のピッピ」シリーズの1つで舞台になった南の島の名前である。テレビ、映画化もされたこの小説の主人公ピッピは自由奔放なやんちゃな女の子。ヨハネスは、放浪の旅による国際的な経験を糧に、ピッピのような自由な発想で、自然と共生する建築を、約10人の社員たちと一緒に実践している。
通常、木材を加工する比較的大きな工房と資材倉庫をもっているが、タカツカ建設にはそれがない。別会社である小さな家具工房の敷地を借りて、そこに自作のタイニーハウス事務所を構えている。2〜3人が座って仕事ができるスペースがあるだけ。あとは、道具類を保管できるスペースを家具工房から借りている。
ミニマム経営を徹底
ヨハネスは、できるだけ資産をもたずにスリムに経営することを考え、所有物は、必要最低限なものだけに絞った。大きな加工施設はいらない。プレカットは施設をもっている大きな工務店に依頼すればいい。資材置き場も大きなトラックも必要ない。現場ごとにメーカーや建材店に注文し、直接現場に送ってもらえばいい。社員はけん引荷台つきの自転車で市内の現場に通う。
徹底したミニマム化は、彼の中南米での放浪の旅の経験がもとになっている。彼は、ドイツのように立派で高価な道具がない国で、ロープや簡易で安い道具類だけで工夫して作業することを学んだ・・・
この記事は新建ハウジング5月30日号8面(2024年5月30日発行)に掲載しています。
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