能登半島地震からまもなく半年。石川県によると5月21日時点で能登地方を中心に全壊や半壊など含めて8万1242棟の住宅被害を確認している。被災地で復旧・復興に向けた作業が急ピッチで進む中、その一翼を担っているのが、自治体と災害時の支援協定を結び、工務店による木造応急仮設住宅の建設に取り組むJBN・全国工務店協会と全国建設労働組合総連合(全建総連)で構成する全国木造建設事業協会(全木協)だ。避難生活の長期化をにらみ、基本仕様は、熊本地震(2016年)や同豪雨(2020年)の際に構築した「熊本モデル」を採用。6月末までに551戸を建設する計画だ。山間部が多く土地の狭い能登地方では、「用地確保が難しい」といった課題が指摘されている中、より多くの被災者を支援するために2階建ての応急仮設を導入した。過去の災害ではなかった初の試みとなる。
石川県で全木協が手がける応急仮設住宅(在来工法)は、輪島市と珠洲市にある用地で、全7団地8現場551戸の建設が進行中だ。全木協によると、全国から労働者供給事業として、3月18日から5月21日の間に延べ1万2976人が応援部隊として送り込まれた。現場監督なども続々と現地入り。地元工務店3社のほか、他県からは富山県5社、熊本県5社、山口県1社―が参画している。
国が定める応急仮設住宅は、▽従来型(プレハブ)、▽まちづくり型、▽ふるさと回帰型―の3種類だ。このうち全木協は、「まちづくり型」を建設する。気候風土に配慮したまちを整備することを目的に、市街地近郊のまとまった空き地に長屋型の木造応急仮設住宅を整備するもの。
いずれも平屋建てで1~2人用(20㎡)、2~4人用(30㎡)、4人以上(40㎡)のほか、バリアフリータイプなどもある。地域住民の交流拠点として、みんなの家(談話室)6棟に加え、サポートセンター(集会場)を2棟建てる。
甚大な被害のあった能登地方は、山間部が多く、浸水区域も広域で「用地確保が懸念材料」(全木協)。県からの要請で、全木協が手がける応急仮設住宅では初めて2階建て仕様の採用に踏み切った。合計8戸を建設する。
2階建て仕様をめぐっては、全国で最も用地の確保が困難とされている東京都でも、全木協・東京都協会が都と導入に向けた具体的な検討を進めているとみられる。
避難生活の長期化にらみ性能向上
全木協が手がける応急仮設住宅では、避難生活の長期化を想定し、性能向上を図っている。基本仕様は・・・
この記事は新建ハウジング6月10日号1面(2024年6月10日発行)に掲載しています。
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