2025年省エネ基準適応義務化、省エネ上位等級の新設など、脱炭素社会の実現に向けた動きが加速している。住宅の高性能化を目指すうえで関心が高まっているのが、木造住宅における基礎断熱工法だ。そこでデュポン・スタイロ(東京都千代田区)では、3月22日、「基礎断熱の優位性とシロアリ対策」と題したセミナーを開催。松尾設計室(兵庫県明石市)代表取締役の松尾和也さん、青山プリザーブ(札幌市)代表取締役社長の青山達哉さん、丸三ホクシン建設(北海道石狩市)代表取締役の首藤一弘さんによる講演が行われた。
基礎断熱でなければ低気密と結露リスクから逃れられない!!
■松尾設計室 代表取締役 松尾 和也さん
私は現在、年間30棟ほどの住宅を設計しています。そのうちほぼすべての住宅で採用しているのが基礎断熱です。この傾向は2003年ごろからなので、延べ400棟くらいにのぼります。もともと大学時代から基礎断熱の研究をしており、卒業後に入社した工務店でも標準となっていたので、私の中では基礎断熱というのは「当たり前」「常識」という認識でした。
しかし、実際には他の工務店の方と話をしてみると、まだまだ床断熱の現場が主流。この業界に入って20年以上が経過していますが、本州では基礎断熱の採用率は20~25%程度というのが実感です。
基礎断熱を採用するだけで気密性を高められる
いま、住宅の高性能化の波は全国に及んでおり、ここ数年は、高気密に取り組む工務店も増えてきています。そうした「気密初心者」からよく聞くのが「C値が上がりにくい」という悩みです。
その理由の多くは床断熱を採用していること。基礎断熱に変えたら、簡単に0.3くらいは数値が改善できるはずです。そもそも気密を考えるとき、みなさん壁や屋根・天井を意識しますが、床にどれだけ気を使っているでしょうか。床は柱や給排水管が貫通しているうえに床下点検口もあります。それぞれきちんと気密処理をしなければなりません。「面」で処理しないといけないので、床断熱で気密を確保するのは実は相当な手間がかかるのです。
床下の夏型結露のリスクは今後高まっていく
一方、基礎断熱は外周部の基礎に沿って、「線」として気密施工すればいい。床断熱と比べたら圧倒的に施工は楽になります。そして基礎の内側で断熱すれば、断熱材の使用量、施工手間も床断熱より大幅に減らすことができます。住宅の性能が上り、施工手間や材料費が削減できるという大きなメリットがあるのに、なぜ基礎断熱の普及がなかなか進まないのでしょうか。
ひとつには「基礎断熱は床下を密閉するので結露やカビが心配だ」という誤解もあるようです。これについてはすでに建築学会の査読論文で「竣工初年度は基礎のコンクリートからの水分がこもるが、2年目以降は床断熱の家の方が結露が発生しやすい」と結論が出ています。
確かに基礎のスラブからは初年度は約1トンもの水分が放出されます。ですから、基礎断熱の場合、床にスリット上の換気口を10か所ほどバランスよく配してやることが大切。自然に湿気が抜けていきます。
対して、床断熱の場合は床下に通気はあるものの、夏場などは湿度の高い外気が入ってくることに。それが断熱材の隙間をぬって、エアコンで冷たくなった床の裏に触れた瞬間、空気に含まれた水分が結露となってしまうのです。
今後、世界的に気温が上昇し、海に囲まれた日本では水蒸気が増えて、湿度も高くなっていきます。床下の夏型結露のリスクはこれまで以上に高まっていくはずです。
高気密・高断熱は工務店選びの第一条件に
これからの家づくりでは、基礎断熱は必要不可欠。いまはお施主様のほうでも、「高性能住宅を建てられるかどうか」というのが、工務店を選ぶ第一条件になってきているように感じます。「許容応力度計算による耐震等級3」、「G2レベルの断熱性能」と同じレベルでマストの要素になってきている。
基礎断熱でなければ、高気密・高断熱は実現できないし、結露のリスクも低減できない。プロであるなら、地球温暖化の進む現状に対応して家づくりをするべきだと考えます。
基礎断熱におけるシロアリ被害の現状
■青山プリザーブ 代表取締役社長 青山 達哉さん
当社は北海道札幌市の本社のほか、旭川、十勝、函館にも拠点を持ち、木造住宅の防腐・防蟻施工と、FRP防水住宅空気環境の調査、虫やネズミの防除などを主な業務にしています。シロアリ被害は当地でも5~6年前から増加傾向にあります。2023年には当社で行った駆除件数はここ20年でもっとも多いものとなりました。
シロアリ被害があると両隣5~6軒に影響が及ぶ
シロアリは産卵に専念する生殖階級、エサをとってくる職アリ階級、巣を守る兵役階級に分かれており、職アリ階級は巣のコロニー全体の90%を占めると言われています。職アリ25匹から巣が再生したという研究結果もあるので、駆除するためには職アリ階級を全滅させないといけません。シロアリのエサは木に含まれるセルロースなど。目が見えないので嗅覚に頼って行動する性質があり、空気の流れに敏感です。振動や紫外線を嫌がるので、地上を移動するときには「蟻道」と呼ばれる通路をつくります。シロアリ被害のある家の基礎にはこの蟻道がよく見つかります。
ヤマトシロアリは行動範囲が約30m、イエシロアリは約100m。基礎のベースの下まで地中を掘り進んで侵入してきます。1軒被害があると両隣の5~6軒くらいまで被害が広がることも。基礎断熱の場合は、蟻道をつくる代わりに断熱材を食い破ってその内部を通るという被害例が発生しています。「スタイロフォームAT」のような防蟻性能を備えた断熱材が有効ですね。
当社では、シロアリの習性を利用して最小限の薬剤で巣を根絶させるシステムも採用しています。「スタイロフォームAT」とともにそうした薬剤予防を併用することをお勧めします。
北海道の断熱施工とシロアリ対策
■丸三ホクシン建設 代表取締役 首藤 一弘さん
当社は北海道石狩市で父の代から50年にわたって地域の住宅需要に応えてきました。現在も15人の大工を擁する技能者集団です。
「手づくりの家をお客様に」をモットーに、大工をはじめとする職人さんとお客様、設計企画スタッフが、力を合わせて一軒の家を作っていくことがわが社の基本姿勢です。北海道では冬季は地面が凍結するのでベタ基礎が難しく、いまだに布基礎が中心。当社では布基礎に鉄筋を入れた土間コンを敷いて、地中からの湿気を抑え、基礎の強度を高めるという仕様にしています。
基礎断熱にはシロアリを防ぐ「スタイロフォームAT」を標準に
札幌市内にある最近建築した住宅はUA値0.26、C値0.12c㎡/㎡。外周の基礎に「スタイロフォームAT」の100mmを外張りして、断熱としての連続性を大事にしています。
「スタイロフォームAT」の上には薄くモルタルを塗布。設備業者が穴を開けたときには、AT-02という防蟻剤の入った専用のコーキング剤で処理することも重要です。こうした取り組みは2年前から。それまでは「札幌圏内にはシロアリはたいしていないだろう」「しっかり乾燥させた木なら食われないだろう」と思い込んでいたのです。しかし、近年は当地でもシロアリ被害が報告されるようになり、「これはいけない」ということで、シロアリの食害を防ぐ「スタイロフォームAT」を標準仕様に取り入れるようになりました。
北海道の生活は、冬でも家の中は温かくて、ご主人はよく冷えたビール、奥様やお子様はアイスクリームを楽しむというスタイルです。そんな暮らしができるように、当社の家づくりでもなるべく性能を高くしたいと考えています。窓の面積が抑えられてしまうので断熱等級7までは無理をしない。できるだけ快適な温熱環境がつくれるように、等級6を標準にして、日差しがちゃんと入る家を建てていきたいと思います。
(sponsored by デュポン・スタイロ)
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