1968年の創業以来、高崎市倉渕町に根ざした活動を続けてきた中澤建設(群馬県高崎市)は2019年夏、40年以上前に自社が“新築”した住宅をリノベーションすることになった。引き渡し後も温熱環境の改善を、住まい手とともに続けている。なぜこれほどロングスパンで付き合いが続くのか、2代目社長の中澤康之さんに話を聞いた。
中澤さんは、人と人の関係で生まれる時間や思いを「ヒトトキ」と表現する。施主や協力業者たちと数えきれないほどの時間を共にする家づくりだからこそ「思いやりを持った人たちと仕事したい」と話す。「木の扱いもそうだし、人とのつながりも同じ。思いやりがない人と一緒に家づくりをすることは難しい」と考えている。また、創業者の父親から教わった「家づくりはお客様と家族になること」も中澤さんの根底にある考え方だ。
43年前の新築をリノベーション
2019年の夏、高崎市倉渕町の住民から、自宅を建て替えもしくは改修できるかどうかの相談があった。その「自宅」は偶然にも43年前に同社が新築した住宅。しかも、そこに長年住み続けていた施主の祖父は、中澤さんの父親の親方に当たる大工だった。施主は迷っていたが、同社と祖父の縁が深いことから「この家をつくってくれた大工さんの手で、新築と同じくらい快適な家に生まれ変わらせてもらえるなら残したい」との思いで、建て替えではなくリノベーションを決断したそうだ。
施主宅がある倉渕町は、高崎市内では唯一4地域に該当する寒冷地で、長年冬の寒さに悩まされていたという。また家の裏(北東)には水路があり、湿気が多くカビが発生しやすい状況。キッチンで石油ファンヒーターを使うと湿気を吸い込んで故障することもあり、加えて度重なる地震も心配事だった。
中澤さんは、断熱性と耐震性能を同社の新築同等の基準まで引き上げることを念頭に置き、基礎と躯体のみを残したスケルトンリノベーションを計画。耐震性は、補助金を活用しながら屋根材の軽量化工事などを施し、許容応力度計算による耐震等級2を実現。断熱性能を向上させるために、まずは無断熱だった床に押出法ポリスチレンフォーム(カネライトフォームスーパーE-Ⅲ)100㎜厚を採用。壁と天井は元のグラスウールの代わりにウールブレス120㎜厚を充填するなどして、UA値2.70W/㎡Kから0.29W/㎡Kまで引き上げた。湿気の状況もデータを収集しながら検証に努めた。
トライアンドエラーで改善へ
一方で・・・
この記事は新建ハウジング5月10日号9面(2024年5月10日発行)に掲載しています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。