大和ハウス工業(大阪市)はこのほど、建物とデジタル技術を組み合わせて仮想空間や遠隔地とつながる”空間拡張システム”を利用し、団地コミュニティの活性化を図る実証実験を開始した。
実施場所は、開発から年数が経過した兵庫県三木市のコミュニティ施設。デジタル映像と自然音で仮想空間を再現する「XR技術」を採用し、居心地の良い空間を演出することで、利用者数や発話量などへの影響を検証する。具体的には、古都風景や古民家の室内など日常に溶け込む4種類の映像をプロジェクターで映すとともに、リラックス効果のある雨音や囲炉裏で薪をくべる音などを複数のスピーカーを用いて立体音響として流す。また、コミュニティ施設と遠隔地を映像と音声でリアルタイムに繋ぐことで、リモートによるコミュニケーションの快適性を確認する。
実証実験では、各種センサー技術も導入し、仮想空間の体験や遠隔地との映像・環境音の共有が利用者に与える影響を分析。発話モニタリング用のマイクやカメラ、表情分析センサー、温湿度・CO2濃度センサーなどを設置することで、来場者へのアンケート評価と各種センシングデータとの相関関係を検証する。また、仮想空間の体験や遠隔地との空間共有をするときとしないときの来場者の滞在時間、居場所の選択、世代間交流の発生状況などの傾向も確認する。空間内の様子を捉えたセンシング結果をデータベースとして蓄積・分析することで、将来的に地域コミュニティの活性化に寄与する空間拡張システムの開発を目指していく。
これまでコミュニティ施設では、イベントなどのきっかけがない場合には利用者が限られてしまうため、定常的に多世代が集って交流する仕組みを必要としていた。そこで同社は、コミュニティ施設において空間拡張システムによる郊外型住宅団地のコミュニティ活性化への効果を検証することにした。今回の結果をもとに、コミュニティ施設の利用頻度向上につながる空間拡張システムを開発し、行政サービスの告知や企業による商品販売の仲介などに繋げていきたいとする。
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