東京都江戸川区は、全ての窓口業務をメタバース上で行う「メタバース区役所」の実現に向けたプロジェクトチームを発足。提携先である東京情報デザイン専門職大学(中鉢良治学長)とともに4月26日、同区が運営するメタバース上で発足式を行った。2030年に予定される区役所新庁舎への移転を機に本格運用を開始する考え。
「メタバース区役所」は、申請手続きなどの行政サービスや各種相談を、仮想空間であるメタバース上で提供する取り組み。「究極のバリアフリー」を目指し、全ての可能な手続きがアバター(デジタル上のキャラクター)を使って行えるようにする。区役所と区民の接点としてだけでなく、多様な区民同士が緩やかにつながる活動の場としても活用する。
プロジェクトでは、ライブ感とリアル感が体験できる空間を創出。区役所に来庁した場合と同様の体験が提供できるよう、誰もが簡単に使える操作性の高いシステムを構築する。パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンでも利用できるようにする。システム構築は、専門職大学の大舘隆司准教授と研究室の学生が担当する。
区では経営企画部DX推進課が主体となり、2023年9月から「メタバース区役所」の実証実験を開始。障害者団体の協力を得て、行政手続きの電子申請化や、相談業務のある139係でオンライン相談の環境構築を行ってきた。電子申請化についてはすでに約2600件の実績がある。
実証実験では、①操作性(UI)の改善、②満足度の高い対応(UX)、③本人確認方法、④プライバシー対策、⑤運用方法-などの課題が明らかになった。特に障害者や幅広い年齢層など、多様な人が利用しやすい環境の構築が必要となっている。今後、可能な範囲から先行運用を実施しながら実証実験を行い、段階的に機能を拡張。一部の機能については今年度中にも運用を始める。
斉藤区長「寄り添い型のサービスに」
発足式で斉藤猛区長は、同プロジェクトについて「オンライン申請でも来場不要という目的は達成できる。しかし、メタバースのデジタル空間の中で、職員と区民がリアルタイムでコミュニケーションできれば、寄り添い型の手続きを提供することが可能となる。メタバースでは氏名を明かさなくても良いため、これまでにない用途での利用も可能となる。アバターを介したコミュニティづくりや仮想空間での会議など、メタバースの特長を生かした取り組みを進めていきたい」とコメント。
東京情報デザイン専門職大学の大舘准教授は、「自治体でメタバースを使うこと自体は、ここ数年で増えているが、地域の物産の販売や就職相談、交流会といった内容が主流。行政機能をメタバース上で行うのは最先端のチャレンジだ。オンラインゲームの場合は活動や遊びがなければ人が集まらない。区役所の場合も区民に参加していただくためには、どれだけ活動量や利便性が高められるかが鍵となるだろう」と話した。
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