公営住宅の空き室に大学生を受け入れる取り組みが各地の自治体で広がっている。自治会活動への参加を条件に、安い家賃で提供。住民の高齢化が進む団地の活性化や、空き室の有効活用を図る狙いがある。
国土交通省によると、公営住宅は2021年度末時点で全国に約213万戸。入居者の6割を65歳以上が占める。空き室は約4万戸だった。公営住宅への入居は原則、低所得者世帯が対象だが、国の許可を得られれば、要件を緩和できる。
札幌市は18年度から、市営住宅の「もみじ台団地」で、北星学園大学の学生を対象に入居者の募集を始めた。2DKの部屋の家賃は市営住宅としては最低水準の月1万2000円程度。22年には札幌学院大学とも連携。現在は9人の学生が入居している。
市営住宅にはエレベーターがなく、上層階に空き室が目立っていた。学生には清掃や除雪当番、祭りの手伝いなどに可能な限り参加することを求めているが、入居する一人は「楽しんでやっているし、就職活動でも役立つ」と指摘。自治会長は「高齢者ばかりの中に若い人たちが入ってくれて、活性化につながっている」と話す。
東京都は、東京都立大学など都内の9大学と協定を結び、都営住宅に学生を受け入れている。今年3月1日時点で54人が入居。資源ごみの回収作業などに加え、子どもの学習支援に協力してもらっているという。神奈川県や京都市などでも同様の取り組みが行われている。
兵庫県は県営住宅の入居で、奨学金返済者向けの優先枠を設け、6月から募集を始める。若い世代の経済的負担を軽減し、県内への定住につなげるのが狙い。斎藤元彦知事は「人生を歩んでいく上で住宅は非常に大事な場所。しっかり提供できることが県内の若い世代が定住する大きなポイントになる」と強調した。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。