AQ Group(東京都新宿区)は4月23日、埼玉県さいたま市に純木造8階建ての本社ビルを竣工したと発表した。施工面積は6165.95㎡(吹抜含)、最高高さが30.95m、木材使用量は1695㎥で国産材率36.6%。
同社が培ってきた戸建て木造住宅の「材料+生産システム+施工システム」に、技術力、構想力をプラスした、コストパフォーマンスに優れた実証実験ビルとして完成させた。工期は17カ月、費用はこれまでの木造ビル建設費の2分の1(坪145万円)を実現した。今後、中小ゼネコンや工務店でも建設できる構法と価格帯の「純木造中規模建築物の普及型プロトタイプ」として普及に取り組んでいく。
同ビルは、住宅(在来木造軸組工法)用プレカット工場で製材、加工された木材で建築。建築金物なども極力普及しているものを活用した。モジュール化、グリッド化することで設計、施工の標準化を実現している。日本の伝統の技である木組みの技術を駆使し、耐火性能を担保しながら多くの構造部材を「あらわし」とした。免振装置を使わない、木組みの構造体だけで施工された耐震工法で、耐力壁は住宅用耐力壁の16倍、耐荷重は300kNと軽自動車30台分の重量に耐えられる強度を確保している。施工は木造の職人が行った。
今後、工務店や中小ゼネコンが建築全体をプロデュースしながら連携を深めることで、合理化やコストダウンが可能になるとしている。
新社屋の炭素貯蔵量は1444t-CO2で、一般木造住宅に換算すると95棟分。CO2排出量は、鉄筋コンクリート造と比較すると43%削減。建築費は、大手ゼネコンによる先導的な木造ビルと比較して2分の1、鉄骨鉄筋コンクリート造の約3/4と大幅に抑えられることを実証した。
カーボンニュートラル社会の実現に向け、建築物の木造化・木質化が推進され、非住宅の木材利用拡大が加速。木造中規模建築に注目が集まっているが、一部の施工会社のみが可能な建築方法や高い建築費が普及への大きな課題となっていた。同社は、特殊な技術や資材を使用しないことでコストを抑えた「普及型木造ビル」を開発。5階建て以下の木造ビル・木造マンション・商業ビルを展開し、約16兆円市場へ参入するとしている。
同社は、日本に木造の街並みを復興する「Re:Treeプロジェクト」を推進。普及型木造ビル・マンションのノウハウを、地域工務店・ゼネコンに提供していく。
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