連合は4月18日、2024年春闘で、組合員数300人未満の中小組合の賃上げ率(加重平均)が4.75%(月額1万2170円)になったとの4回目の集計結果を発表した。1回目の4.42%から高水準を保ち、賃上げが小規模事業者にも及んでいることが裏付けられた。この流れを維持するには、人件費を含めたコスト上昇分を価格に転嫁する慣習の定着がカギとなる。
賃上げ率は基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給の合計。大手を含む全体では5.20%(月額1万5787円)と33年ぶりの水準だ。
記者会見した芳野友子会長は上昇を続ける中小の賃上げ率について、「心強く感じている」と述べ、価格転嫁の取り組みも「少しずつ前進している」と評価した。
缶パーツ製造を手掛けるヒロハマ(東京都墨田区)の広浜泰久会長は、「今までは(人件費は)自助努力という感覚が強かったが、雰囲気が変わり始めた」と話す。業界内では賃上げ分を価格に上乗せする例が増えたという。
ただ、帝国データバンクが中小企業中心に全国1万1267社から2月に得た調査結果では、「全く価格転嫁できない」との回答が12.7%。「多少なりとも転嫁できている」は75.0%に達したが、コスト上昇分を価格に転嫁できた度合いを示す「価格転嫁率」は40.6%にとどまった。コストが100円上昇しても40.6円しか価格に反映できていないことになる。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは価格転嫁について、「大手と直接取引がある中小もいれば(取引のない)零細もおり、ばらつきがある」と指摘。その上で、「公正取引委員会などが(転嫁に応じない取引先企業に)ペナルティーを与えることもある程度必要になる」と指摘した。
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