帝国データバンク(東京都港区)は4月18日、「2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」の結果を発表した。有効回答企業数は1050社。2024年4月の正社員に対する賃上げ実施割合は77.0%だった。賃上げ率は、「3%増加」が22.0%で最も多く、「5%増加」(15.0%)、「2%増加」(12.4%)が続いた。「据え置き」は16.6%、「賃下げ」は0.6%だった。
労働団体の連合が目標としてきた「賃上げ率5%以上」は26.5%にとどまった一方、「5%未満」は67.7%と3社に2社にのぼる。なお「正社員はいない/分からない」は5.8%だった。
規模別の「賃上げ」実施割合は、「大企業」が77.7%、「中小企業」は77.0%とほぼ同水準となった。一方、「小規模企業」は65.2%で、全体(77.0%)を11.8ポイント下回った。賃上げを行う企業のなかには、コスト増で厳しいながらも「従業員の士気向上のためわずかながら賃上げを行った」企業もみられた。一方、「据え置き」企業からは「売り上げが上がらないなかでの賃上げは、中小企業にとってかなり厳しい」といった声があがっている。
2024年度の新卒社員の採用状況を聞いたところ、「採用あり」は45.3%だった。「大企業」は「採用あり」が76.2%と全体を約30ポイント上回った一方、「中小企業」は40.9%、「小規模企業」は23.7%と大きく下回り、採用状況が二極化している。「採用なし」は53.1%だった。
中途採用のみの企業が複数あるほか、「応募がなかったため、来年度を見据えて賃金の底上げを図った」など、採用活動を行ったものの人材を獲得できなかった企業もあった。
新卒社員の初任給の金額で最も多かったのは「20~24万円」(57.4%)で、「15~19万円」(33.3%)が続いた。3社に1社が「20万円未満」(35.2%)となっている。企業には「新卒社員獲得のため初任給を引き上げる」動きがある一方で、経営状況によって賃金引き上げを諦めざるを得ないケースもあり、大企業と中小企業の間で「格差拡大」を懸念する声があがっている。
同社は、日本で多数を占める中小企業の賃上げが進まなければ、企業収益の改善と経済の好循環、景気回復の実現は難しく、中小企業における人手不足問題の深刻度が増す可能性があると指摘。中小企業は、コスト上昇分の価格転嫁を行いやすくする工夫や、デジタル化・省人化で生産性を向上し、賃上げ原資を確保するなど、さまざまな対策が必要だとしている。
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