塩ビ工業・環境協会がこのほど公表した「2023年度塩化ビニル樹脂製品別生産出荷実績」によると、2023年の窓枠用途の出荷量が前年比13.6%(4159レジントン※増)の3万4813レジントンとなった。2017年以降では最多で、前年のマイナス分を考慮しても大きく伸びている。「先進的窓リノベ事業」(環境省・経済産業省)の好調による断熱窓の需要の高まりが背景にあると考えられる。※レジントン=可塑剤添加前の樹脂ベースの重量
塩化ビニル樹脂全体の需要は、1997年にピークとなった後、2008年以降に大きく減少。2013年に再び増加傾向が見られたが、ここ数年は減少していた。2023年の出荷総量は149万7544レジントンで、前年比で1.8%増加。窓用の13.6%増や合皮用の8.6%増などを除くと、大半の製品用途で出荷量が減少していることから、窓枠用途が全体の需要を押し上げていることが分かる。
日本サッシ協会が23年にとりまとめた「住宅用建材使用状況調査」(22年9月調査)によると、戸建て住宅におけるの「アルミ製」比率は全国で71.4%と、前回調査の74.1%から2.7ポイント減少した一方で、「樹脂製」比率は28.5%で2.8ポイント増加した。共同住宅では「樹脂製」が5.0%で、前年から0.6ポイント減ったが、断熱窓の取付率は67.0%と増加傾向にある。
戸建て住宅での断熱窓の取付率は、窓数比91.9%で同0.4ポイントの増加。北海道など、断熱7地域以北では9割以上の窓が断熱化されている。複層ガラスの取付率は窓数比99.4%で、戸建て住宅では複層ガラスが標準的に使用されている。構成比は、「複層ガラス」1.3%、「Low-E(ガス無)」46.1%、「Low-E(ガス入)」44.5%、「三層複層ガラス」7.6%となっている。
リサイクルが今後の課題
樹脂窓は、高断熱・高気密性能を有するだけでなく、台風などの雨に強い、塩害に強いなど、多様な気候区分のある日本に適した素材となっている。その一方で、大部分が埋立て処分となっていることから、どのようにしてリサイクルするかが課題となっている。
塩ビ工業・環境協会、日本サッシ協会、樹脂サッシ工業会は、新たに掲げた「樹脂窓リサイクルビジョン」の中で、今年中に使用済み樹脂窓由来の再生材を用いたリサイクル製品の市場投入を行うこと、工場内で発生する余材(工場端材)の再利用と再生原料化、使用済み樹脂窓の回収により、2030年までに年間1万トンの再生原料を活用することを掲げている。その実現に向けて今後、回収の仕組みづくり、効率的なリサイクル技術の確立、リサイクル・環境配慮製品の開発・普及に取り組む考えを示している。
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