帝国データバンク(東京都港区)はこのほど、2023年度の「人手不足倒産の動向調査」の結果を発表した。3月の人手不足倒産は49件と月次ベースで最も多く、年度累計は313件と過去最多を更新。新型コロナ感染拡大前の2019年度(199件)を大幅に超え、前年度(146件)から倍増した。
業種別では、建設業が94件、物流業が46件となり、2業種で全体の44.7%を占める。4月から時間外労働の上限規制が適用される両業種では「2024年問題」が懸念されているが、人手不足倒産がそれぞれ過去最多を更新し、すでに深刻化していることが明らかとなった。
業歴別では、約4割にあたる119件が「30年以上」だった。従業員数別では「10人未満」の小規模事業者が7割を超え、4社のうち3社にのぼる。退職者の代替人材が補填できない、外注依存による収益圧迫などによって、資金繰りに支障が出るケースも多い。
建設・物流業では人手不足割合が7割前後と全体(52.4%)を大きく上回っており、人手不足感が緩和しないまま時間外労働の上限規制がスタートしたことから、今後も人手不足倒産は過去最多を更新する可能性があるとみられる。資材・エネルギーなどのコストが高騰するなか、両業種の価格転嫁率は全業種平均よりも低く、人材募集に欠かせない賃上げの足かせとなっている。同社は、業界全体で人材の確保・定着に向けて厳しい局面が続くと予想。社会インフラとして欠かせない両業種は、早急な対策を迫られているとした。
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