帝国データバンク(TDB、東京都港区)は4月3日、2024年3月の景気動向調査結果を公表した。景気DIは前月比0.5ポイント増の44.4となり、3カ月ぶりに改善した。国内景気は、金融政策の正常化がスタートしたなか、好調な観光産業やインバウンド消費の拡大などが好材料となった。今後の景気は「金利の動きが注目されるなか、個人消費を中心として緩やかに持ち直していくと見込まれる」とした。一方で、能登半島地震の被災地域からの部品供給の遅れや、春物需要の先延ばしが下押し要因で、中小企業を中心に賃上げに対する厳しい声もあがっている。
「建設」は47.0(前月比0.5ポイント減)で2カ月連続マイナス。「企業投資の継続と賃上げによる好景気」(建築工事)といったプラスの意見もあったが、「工事が長期化し、未請求が増え資金が前出し傾向にある」(信号装置工事)、「建設業の2024年問題をどのようにクリアしていくか課題が山積している」(土工・コンクリート工事)、「人手不足のために案件があっても受注できない。材料費や労務費の高騰を完全に転嫁できない」(一般土木建築工事)など、厳しい状況が続いているとする意見が目立つ。「住宅の着工数が大きく減少している」(建築工事)との声もあった。
一方、「不動産」は49.3(同1.0ポイント増)で3カ月連続のプラス。ただし、「地価が高騰しているほか、販売状況も好調」(建物売買)といった意見もあるが、「マイナス金利の解除により、住宅ローンの金利がどう変化するか見通しがわからない」(不動産管理)、「建築費が高騰しているため、新築住宅が高額化して売れない」(土地売買)など、懸念材料も挙げられている。
先行きについては、「都市部再開発による好影響」(防水工事)、「再エネ関連は、当面引き合いが強いと予測」(電気通信工事)、「国土強靭化計画や防災、減災対策による港湾・浚渫工事の増加」(土工・コンクリート工事)などプラス意見もあるが、「公共事業費が極めて少ない」(土木工事)、「建物が建たないほか、原価も高騰している」(信号装置工事)、「物価、賃金の上昇のほか、客先の投資意欲も減少」(建築工事)、「仕事量が少なく同業他社との競合で所定の利益が確保できない」(内装工事)、「資材高騰の影響が大きい」(木造建築工事)、「中小物件の見積依頼が激減」(鉄骨工事)、「物件の供給過多が続いている」(貸家)、「賃上げ満額回答と世間を沸かせているが、中小企業にとっては賃上げは現実的ではなく、経費増のためかえって逆風の状態」(貸事務所)など、先行きを懸念する声が目立った。
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