能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県では、今なお8000人超が避難生活を送る。県は被災者の避難先把握を進めているが、自治体の運営する避難所を離れ自宅や車中泊をする被災者もおり、難しくなっている。専門家は「これまでの災害の教訓が全く生かされていない」と指摘する。
県は避難生活を送る被災者の所在や連絡先などの情報を得るため、窓口を設置。市町と情報を共有し、データベース化を進めている。ただ把握できているのは、地震後に避難した約3万4000人のうち約2万1000人にとどまる。担当者によると、避難所では避難者一人ひとりに手書きで書類を提出してもらう以外に方法がなく、効率的な把握が困難という。
関西学院大学災害復興制度研究所の山中茂樹顧問(災害復興学)は「本人が届け出ない限り、追跡が不能になっている。時間がたってから全員を把握するのは非常に難しい」と指摘。正月に地震が起きたことから帰省者も多く、把握がより難しかったとした一方で、集落単位での2次避難を行わなかったことが「最大の失敗だ」とした。
山中氏は、2004年の新潟県中越地震で旧山古志村から長岡市へ全村避難したように「集落単位で入れる仮設住宅を作るべきだった。(元の居住地に)戻る人も減り、一気に過疎化が進む危険性がある」と話す。避難者の把握が進まず支援が途切れることで、災害関連死の把握も困難になると危機感を示した。
山中氏によると、東日本大震災では、行政から委託を受けた県人会組織などが県外避難者の情報収集を進め、支援情報が避難者にうまく届けられたケースもあった。同氏は「今回もNPOなどに協力を求める必要がある」とした上で「過去の災害を教訓として生かさなければいけない」と語った。
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