国土交通省が26日発表した2024年の公示地価では、熊本県や北海道の大型半導体工場の立地周辺地点が上昇率の全国1~3位を独占した。関連企業を含む従業員向けの住宅やオフィスの建設需要の急増が背景にある。限られた適地を巡り争奪戦の様相も呈しており、半導体工場誘致の地域への波及効果が鮮明となった。
上昇率の全国1位は、前年比33.2%の上昇を記録した熊本県大津町の商業地の地点。熊本市の北東、阿蘇山の麓に位置する同町は、半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)の工場が建つ同県菊陽町に隣接する。続く2位はその菊陽町の商業地の地点で30.8%上昇した。
第2工場建設も控え、住宅需要の一段の増加が見込まれる中、「一定規模が必要な共同住宅などの用地が極端に不足している」(国交省担当者)という。熊本県の2地点とも、上昇率が前年の1~2割から拡大した。
一方、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京)が工場を建設している北海道千歳市では、商業地の地点が30.3%上昇し、全国3位を記録した。もともと空港関係者らの住宅需要が堅調で、半導体工場の建設計画発表前に調査した前年も2割上昇していたが、発表後は建設作業員向けを含めた住宅需要などがさらに押し上げた。
新工場周辺では、不動産価格の上昇や消費活発化による経済効果に期待が高まる一方、賃貸物件の家賃が上昇する可能性がある。希望するエリアで家を借りたり買ったりするのが難しくなるほか、交通渋滞の深刻化も懸念される。
このほか工業地では、インターネット通販向けの大型物流施設の需要が旺盛。首都圏を中心に高速道路にアクセスしやすい地点の上昇が目立った。千葉県市川市など3地点は3割近く上昇。都内に比べると地価が低いことも人気の理由という。
トラック運転手の残業規制に伴い物流停滞が懸念される「2024年問題」が迫る中、長距離区間をリレー方式で運ぶ「中継輸送」の拠点を中部地方などに設ける動きも一部あるが、今回の地価では「(影響は)出ていない」(別の担当者)という。
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