東京商工リサーチ(TSR、東京都千代田区)は3月22日、1-2月の「人手不足」関連倒産が24件(前年同期比14.2%増)と、2年連続で前年同期を上回ったと発表した。2023年2月から13カ月連続で10件台で推移しており、2023年度の累計は2月時点で150件(同120.5%増)と前年同期の2.2倍に急増している。このペースでいくと、2023年度は2019年(160件)を超えて過去最多を更新する可能性が高いとした。
要因別では、「求人難」が13件(同30.0%増)で3年連続前年同期を上回り、全体の54.1%と半数以上を占めた。「従業員退職」も8件(同33.3%増)と2年連続前年同期を上回り、1-2月では2013年の調査開始以降最多となった。一方、「人件費高騰」は3件(同40.0%減)と2年ぶりに前年同期を下回った。
産業別では、10産業のうち4産業で前年同期を上回った。建設業は5件(同66.6%増)で3年連続前年同期を上回った。不動産は4年連続で同期の発生が0となった。業種別では左官工事業、塗装工事業、防水工事業などで各1件発生した。
輸出産業などの好業績を背景に賃上げ機運が高まるなか、中小企業も従業員確保のために賃上げが避けられない状況にあるが、賃上げ原資の確保が難しい中小・零細企業では資金繰り悪化に拍車をかける悪循環に陥っている。大手企業と中小企業、輸出産業と内需産業の格差が拡大しており、従業員の待遇改善が進まない企業は、人材流出に歯止めがきかないことも危惧される。業績回復が遅れ、賃上げが難しい企業や無理な賃上げで資金繰りが悪化した企業を中心に、「人手不足」関連倒産はしばらく増勢をたどるとみられる。
同調査は、2024年1-2月の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出・分析した。(後継者難は対象外)
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