4月からトラック運転手の時間外労働に上限規制が課され、人手不足や物流停滞を招く「2024年問題」への懸念が高まっている。対応の遅れも目立ち、特に首都圏などの大消費地から遠く輸送距離が長い地方にとっては試練となりそうだ。
半数で「違法残業」
「県の農林水産品の競争力がなくなってしまう。輸送コストが上がる」。青森県の宮下宗一郎知事は22日、青森市で行われた講演で24年問題に強い危機感を示した。
4月1日から運転手の残業は年960時間まで、1日の拘束時間は最大15時間(現行16時間)に規制される。働き方改革の一環だが、運転手が1日で運べる距離が減り、遠隔地ほど輸送日数や人件費の増加につながる恐れがある。
青森県トラック協会が先月までにまとめた調査では、県内事業者の2割で残業上限を超える運転手がいると回答。長距離輸送を行う事業者では約半数に上り、対応の遅れが浮き彫りとなった。
宮下知事は昨年11月、遠隔地であることなどを理由に、国に拘束時間規制の緩和を要望したが、受け入れられなかった。県は今後輸送の効率化を支援する方針だが、「運べない物や、法を犯してでも運ぶ事業者も出てくる」(同協会幹部)と、現場には不安が広がっている。
30年に4割運べず
野村総合研究所は昨年1月、30年の輸送力見通しを公表し、運転手不足により全国で35%の荷物が運べなくなると予測した。特に東北は41%、四国40%、北海道と九州は39%が輸送できなくなるとしている。
人口減少に伴う人手不足も背景にあるが、運転手確保には運賃値上げによる賃金改善が必要。しかし、事業者の大半は中小零細で立場が弱く、荷主と協議すらできない場合も少なくない。
燃料費高騰も重しとなる中、廃業や長距離輸送撤退を決める事業者も出ている。九州トラック協会の馬渡雅敏会長は「運賃値上げに応じてもらわなければ、早晩誰も運ばなくなるかもしれない」と訴える。
効率化で成果も
一方、関係者間の協力が奏功している地域もある。秋田県トラック協会は、県や全国農業協同組合連合会、物流ITベンチャーのHacobu(東京)と、県南部から首都圏市場への青果輸送を効率化する実証実験を21年から行ってきた。
パレット利用の徹底で手作業を減らすとともに、従来は運転手が1人で行ってきた集荷と幹線輸送を分離。複数の集荷場所から積み荷を集約するハブ拠点も設けた。その結果、当初は平均15時間18分だった運転手の拘束時間を12時間25分に減らすことに成功したという。
県トラック協会の赤上信弥会長は、24年問題への対応について「ある程度めどは立った」と手応えを示す。ただ、これらの対策で約27%のコスト増が見込まれる。当面は地域内で分担するが、赤上氏は「最終的には消費者に負担してもらいたい」と本音を語る。
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