日銀のマイナス金利政策解除は、家計に与える影響もプラスマイナス両面で大きい。住宅ローン金利など借り入れに伴う負担が増すものの、預金利回りの上昇が期待できる。長年続いた異例の金融緩和で、超低金利が定着していた金融界だが、「金利のある世界」を意識した動きが胎動している。
大手銀行の住宅ローン利用者の7割が選択する「変動型」は、多くの銀行で長らく低水準に据え置かれてきた。黒田東彦日銀前総裁の異次元金融緩和で超低金利環境が恒常化し、短期金利に連動する「変動型」の金利に上昇する余地はなかったからだ。しかし、マイナス金利が解除され、短期金利が上昇する局面になれば「変動型の金利は上昇する可能性が高い」(大手銀行)との見方が一般的だ。住宅ローンの代表的な「固定期間10年」金利は既に昨年夏から上昇傾向にあり、住宅ローンへの負担感は一段と重たくなる。
昨年10月の日銀の政策修正後には、大手行、地方銀行ともに一部の定期預金金利の引き上げが相次いだ。マイナス金利解除後は、各行とも普通預金金利の引き上げが視野に入る。長らく利息が付かなかった預金者にとっては朗報だ。
「金利のある世界」の復活で、銀行の経営戦略も転換を迫られる。金利上昇局面では、銀行にとって貸し出しと預金の利ざやで得られる収益が拡大する。銀行が「邪魔者」扱いしてきた預金は貸し出しの原資となるので、その重要性は一気に増す。全国銀行協会の加藤勝彦会長(みずほ銀行頭取)は「より高い金利を求め、(顧客が)資金を他の金融機関へ移動させる動きが予想される」とみており、預金獲得競争が再来する可能性も出てきた。
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