日銀はマイナス金利政策を解除し、11年続く異例の大規模金融緩和からの「出口」に踏み込んだ。賃金と物価がともに上昇する「好循環」が持続すれば、追加利上げが視野に入る。「金利のある世界」への転換は、超低金利環境に慣れ切った日本経済が長期停滞から抜け出し、新たな成長サイクルに入るかの岐路となる。
これまで植田和男総裁は「2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至れば、大規模緩和策の修正を検討する」と説明。重要な判断材料となる今年の春闘で、前年を大幅に上回る賃上げ動向を確認し、「好循環」実現に近づいたと判断した格好だ。
金融引き締めの影響は、住宅ローン金利や企業の資金調達コストの上昇など広く実体経済に及ぶ。ただ、超低金利の長期化は、業績不振企業を温存させるなど産業構造の新陳代謝を遅らせ、日本経済の低成長につながった面も否めない。デフレ下で染み付いた「物価も賃金も上がらない」というノルム(社会通念)に変化の兆しが出ている中、縮小均衡のコストカット型経済からの脱却が期待される。
一方、マイナス金利解除は、金融政策正常化に向けた通過点にすぎない。日銀が異次元緩和で大量購入した国債は590兆円に膨張しており、市場の混乱を招かずに保有国債を圧縮し、資産規模を適正な水準に戻せるかなど難題が待ち構えている。
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