無事に上棟も済んだ新築の現場でのこと。梅雨に入り、雨が降り続いたこともあって現場の周辺がぬかるんでどろどろに。大工や職人が現場を出入りするたびに泥がはね、柱の一部が汚れてしまった。様子を見ていた建て主が「あとでちゃんときれいにしてくれるんだろうね」と不機嫌に…。
「あのときはとにかく雨が続いていて、そのほかの現場の進行にも支障が出ていました。それで少しでも早く作業を進めなくてはと、施工に関わるみんながちょっと焦っていたのかもしれません」。当時の現場の状況について、工務店を経営するYさんはこのように回想する。
工事車両が資材を搬入するたびに周囲に泥がはねる。大工や職人も足元が泥にまみれたままで建物内を出入りする。もちろん床下地の上には養生シートが敷かれてはいたが、柱の下部や土台などには明らかに泥が飛んで汚れている状態だった。
「家がずいぶん汚れているようだけど…」
そんなところへ近所に住む建て主の夫妻が「3時の休憩に」と差し入れを持ってきてくれた。ふたりとも最初はにこやかだった表情が、現場を見回すうちに曇り始め、もの言いたげな顔に。
「ありがとうございます!おかげで工程も順調です」とお礼を伝えるYさんに「あの、家がずいぶん汚れているようなんですが…」と奥様が不安そうに尋ねる。
「ああ、大丈夫ですよ。あとできれいにしておきますから」とYさんが請け負ったものの、夫妻はどうも納得がいかない様子。その間にも大工が汚れた靴で玄関に工具を持ってくるのを見て、「本当にあとできれいにしてくれるんだろうね」とご主人が不機嫌そうに念を押す。
当初は何気ない雑談のつもりで気軽に受け答えしていたYさんも、いつも温和な夫妻の異変に気がついた。作業終わりに自分が責任をもって掃除をするからと説明して、その場はなんとかおさめたのだが・・・
この記事は新建ハウジング3月20日号7面(2024年3月20日発行)に掲載しています。
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