政府は8日、首相官邸で開いた建設業界幹部との意見交換会で、技能労働者の「5%を十分に上回る」賃上げを要請した。4月には残業時間規制の導入で現場の人繰りが一段と困難になる「2024年問題」が迫る。岸田文雄首相は席上「これからは未来への前向きな新3K、給与が良く、休暇が取れ、希望が持てる産業に変えていかなければならない」と呼び掛けた。
建設業界はこれまで「3K(きつい、汚い、危険)」の職場とされてきた。首相は担い手確保に向けて、3K解消による処遇改善の必要性を強調した。
建築作業を担う技能労働者の多くは、下請けの中小・零細企業で働く。国土交通省の試算によると、技能労働者の平均年収は22年時点で417万円と、全産業より16%程度低い。長時間労働も常態化しており、担い手確保が進まず、現場の高齢化が深刻となりつつある。
4月からは、国の働き方改革の一環で建設業の残業時間に年720時間の上限規制が課される。過重労働は軽減される一方、建設業者では工期の長期化や現場の増員が必要となる。25年大阪・関西万博のパビリオン建設が開幕に間に合わないと懸念される背景には、こうした事情もある。
政府は今回、建設業界と昨年申し合わせた「おおむね5%」を超える賃上げを要請。さらに、著しく低い労務費での契約禁止などを盛り込んだ法案も新たに閣議決定した。
ただ、賃上げ原資の調達には、資材などの建設コスト高騰が向かい風となる。日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設会長)は8日の会合で、賃上げへの努力を約束しつつ「(発注者と)交渉しているが価格転嫁はまだまだだ」と語った。
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