東京都は「東京ゼロエミ住宅」の環境性能基準を見直し、10月1日から施行する。3月5日午前に開かれた「東京ゼロエミ住宅制度概要に関する説明会」の中で公表した。性能規定を現行基準より向上させ、区分を現在の「水準1~3」から「水準C~A」に変更。再エネ利用設備の要件化、助成金の拡充、申請手続きの簡素化(事業者登録制度の導入など)を行う。
東京ゼロエミ住宅の建築件数は、制度を開始した2019年以降、年々増加。22年度は新築住宅の約1割に当たる4214件が認定された。このうちの約9割(4214件)は戸建住宅で、集合住宅は387件にとどまっている。さらに、地域工務店による建築棟数は全体の2割を下回ることが推定される。そこで基準の見直しにより、集合住宅の拡大、地域工務店の参加を推進。新築住宅全体の環境性能の底上げを図る考え。
新基準では、現行の「水準3~2」の性能基準を「水準B」とするほか、さらに高位基準となる「水準A」を設定。太陽光発電設備が設置できない住宅もあることを考慮し、住宅全体でゼロエミ化が達成できるようBEI ZEを設定した。戸建て住宅「水準A」のBEI ZEは「0.55」、UA値は「0.35」としている。集合住宅では近年の技術向上により、木造住宅でも非木造住宅と同一の性能基準を達成できるとの考えから、基準値を統一した。
開口部・給湯設備の要件廃止
太陽光発電設備などの再エネ設備については、屋根が狭小な住宅などを除き、設置することを要件化した。大手ハウスメーカーなどが供給する住宅では、4月から施行する「建築物環境報告書制度」により、再エネ設備の設置を義務付ける。再エネ設備は、太陽熱・地中熱利用設備でも可能。設置容量の制限は設けないが、パワーコンディショナーの設置は必須とする(※ポータブルは不可)。集合住宅では、共用部またはいずれかの住戸で発電した電力を利用すれば要件を満たしたものとする。
省エネルギー性能を有する設備の誘導仕様基準も見直された。戸建住宅では、国の誘導仕様基準に準じ、ダクト式セントラル空調のみ現行の仕様規定と同様とする。集合住宅では、基準を満たさない設備の組合せがあることなどから、設備に関する仕様規定は設定しない。
他に、現行基準からの変更点として、▽照明設備:玄関など1箇所以上に人感センサー付きLEDを設置▽暖房設備:主たる居室に温水暖房用パネルラジエーターまたはルームエアコンディショナーを使用▽冷房設備:主たる居室にルームエアコンディショナーを使用―などの要件を追加した。給湯設備では、WEBプログラム選択可能な設備、節湯水栓では水優先吐水機構のある台所・洗面水栓を選択肢に加えている。
外皮については、国の誘導仕様基準を準用。外皮で仕様規定を用い、設備で性能規定を用いる「たすき掛けルート」を可能とする。また、設計の自由度の向上と認証手続きの簡素化を図ること、計算で性能の担保が可能であることを理由に、現行で要件としている開口部の断熱性能および給湯設備の要件を廃止する。
補助金額については現行よりも拡充し、戸建住宅は1戸あたり、▽水準A:240万円▽水準B:160万円▽水準C:40万円、集合住宅は、▽水準A:200万円▽水準B:130万円▽水準C:30万円―を予定(※都議会で2024年度予算案が可決・成立した場合)。年間供給戸数など、事業者の規模に関する基準は設けない。太陽光発電設備、蓄電池、V2Hへの助成も併せて行う。事業目的が異なる国・区市町村の助成金の併用も可能とする。
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