住宅業界の市況が厳しくなる中、多種多様な建材・設備を地域工務店に提供し、支え続けるメーカーの役割に注目が集まる。本連載では、建材・設備メーカーのトップに新建ハウジング発行人・三浦祐成が「今こそ聞きたい未来の話」を深掘りする。第2回は、セルロースファイバー断熱材のデコスファイバーと、乾式吹き込みによるデコスドライ工法を提供するデコス社長の安成信次さん。時代や環境の変化を見抜き成長し続けるトップの真意に迫った。
三浦 デコスファイバーはトータルバリューが高い断熱材だ。断熱や調湿、吸音性など多くの強みがあり、内部結露が発生した際に備えて20年保証も付く。もっと普及してもいい。
安成 着実に施工棟数も増えているが、多くの住宅を建てるプレハブメーカーや全国ビルダーは違う断熱材を使用していて、セルロースファイバーの全体的なシェアは4%ほどだ。
ありとあらゆる疑念を晴らすために、建材試験センターや大学などと連携して、性能を担保するデータを取得してきた。施主アンケートにおいても、「快適だ」と評価してもらえている。デコスファイバーを標準採用する工務店からの信頼も厚い一方で、まとめたデータ(エビデンス)をいかに使っていくかが課題だ。
三浦 コロナ禍が終わったので、リアルな場での「体験価値」の訴求も効くと思う。この工場は製造工程を体験できるほか性能の体感や実験が可能で、施主に見学してもらえば、工務店が自社の受注につなげることもできるだろう。
安成 確かに地域工務店にとって、「見せられるもの」があることは、大手のプレハブメーカーと差別化できる1つの武器になる。その力をうまく鍛えていくことが重要だ。
信念に寄り添う断熱材
三浦 普及拡大においてボトルネックになっているのはコストか。
安成 コストは中の上だったが、他の建材も価格が上がり、相対的には中間と言えるようになったため問題にはならない。課題があるとすれば、工務店の視点だ。建材を選ぶ際、「何に比重を置いて家をつくるか」という確固たる信念が、普及拡大の鍵になる。
三浦 工務店はどうすればよいか。
安成 私が思うに、地域工務店が復権するためには、「自分たちの選択が間違っていなかった」と振り返ることができる道に進むべきだ。しかし・・・
この記事は新建ハウジング3月10日号16面(2024年3月10日発行)に掲載しています。
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