帝国データバンク(TDB、東京都港区)が2月20日に公表した2023年の「首都圏・本社移転動向調査」によると、23年に首都圏から地方へと本社を移転(転出)した企業が347社となった一方で、地方から首都圏へ転入した企業は310社となり、再び首都圏に本社を移す動きが強まっていることが分かった。このうち「建設業」の転入は33社で、前年から9社増加。「不動産業」は30社で、1990年以降では最多となっている。
東京などから地方へ本社を移転する「脱首都圏」の動きは、コロナ禍を機に増加。その傾向は23年にも見られ、22年に次ぐ水準となった。その一方で、首都圏へ本社を移す企業も増加。転出企業数から転入企業数を引いた「転出超過社数」は37社で、3年連続の「転出超過」とはなったが、数は前年から半減している。
転出先は、「大阪府」(39社)、「茨城県」(37社)、「愛知県」(33社)など。愛知県は1990年以降初めて30社を超えた。売上高規模別では「1億円未満」(164社)と、比較的小規模な企業が多かった。このうち移転年の売上高が前年から増加(増収)した企業の割合は37.4%にとどまっていることから、オフィス賃料などランニングコストの低減を目的とした移転が含まれると想定される。
業種別では、「サービス業」が131社で最多。このうちソフトウェア開発やベンダー、先端技術産業を含むソフトウェア業は21社となっている。2番目に多い「卸売業」(67社)は前年比で17社の増加。郊外の大規模な物流センター開設に伴う本社の移転が目立った。
再び「首都圏一極集中」か
一方、地方から首都圏へ転入した企業は「サービス業」(118社)が最多。次いで、「建設業」「不動産業」が多く、コロナ前の平均を100とすると、「不動産業」は172、「建設業」は117となっている。成長や規模拡大が続く企業の転入が多く、売上高が前年から増加した企業が53.4%を占めた。取引先との関係構築、人材採用の強化、海外や地方へのアクセス面など、首都圏に本社を置くメリットが見直されている様子がうかがえる。
都心回帰への動きは、総務省が1月30日に発表した23年の「住民基本台帳人口移動報告」にも見られた。この報告によると、東京都、神奈川県、埼玉県など関東圏の7都府県で、転入者が転出者を大きく上回る状況が続いているという。リモートワークの普及などで一度は「脱首都圏」の動きもみられたが、アフターコロナによる経済再始動に伴って、再び「首都圏一極集中」の傾向が強まっているのではないかと、同社は分析している。
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