帝国データバンク(TDB、東京都港区)が2月26日に公表した「人手不足に対する企業の動向調査」(2024年1月)によると、正社員が「不足」と感じている企業は52.6%となり、前年同月比で0.9ポイント上昇。1月としては19年の53.0%に次ぐ高水準となった。建設業では69.2%の企業が「正社員が不足している」と回答している。
正社員の人手不足割合は、「情報サービス」(いわゆるIT企業)が最も高く77.0%。「2024年問題」が懸念される建設業(69.2%)、物流業(72.0%)、医療業(71.0%)で、それぞれ7割程度に達した。4月以降、人材不足の一層の深刻化が懸念される。
非正社員の人手不足についても、「飲食店」の72.2%を筆頭に高い割合となった。建設業に関わる職種では、「メンテナンス・警備・検査」(52.0%)が5位となったほか、サプライチェーンの一端を担う「運輸・倉庫」(41.4%)が10位となった。
「ベースアップ、中小企業には逆風」の声
人材の確保・定着に欠かせない「賃上げ」についても意見を聞いた。24年度での正社員の賃上げ実施見込みは、人手不足を感じている企業では65.9%が「賃上げを行う」と回答。正社員の数が「適正」な企業が55.7%、「過剰」が51.6%だったのに比して、高い水準となっている。
具体的な意見では、「労働力不足は顕著であり、賃金を上げないと人員の確保は厳しい」(一般貨物自動車運送)との声があった一方で、「大手を中心にベースアップが相次いでいるが、中小企業には逆風」(鉄骨工事)など、賃上げの実施が困難であるとの声も多く聞かれた。
これらの結果について同社は、「人手不足を感じている企業ほど賃上げを実施見込みであるという傾向が現れた。一方で、コスト高騰が重くのしかかり、賃上げが難航しているという声も寄せられている。どのように賃上げを行い人材の定着・確保へとつなげられるか、企業は人手不足解消に向けた重要な局面に立たされている」と分析した。
同調査は、全国の企業2万7308社を対象に実施したもので、調査期間は24年1月18日~31日。有効回答は1万1431社(有効回答率41.9%)。
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