東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、不健全な経営にもかかわらず融資や補助・助成金によって市場からの退場を免れている、いわゆる「ゾンビ企業」に関する調査結果を発表した。有効回答数は4584社。ゾンビ企業が市場環境が歪めていると「感じる」企業は36.2%と、3社に1社にのぼることがわかった。「感じない」は63.8%だった。業種別でみると、「感じる」と回答したのは「政治・経済・文化団体」が69.5%(23社中16社)で最も多く、「倉庫業」の66.6%(12社中8社)が続いた。「感じない」は、「協同組合」の87.5%(24社中21社)、「電気機械器具製造業」の78.4%(93社中73社)の順に多い。
市場への悪影響を感じる企業に理由を聞いたところ、「ゾンビ企業が不当に安い単価で受注(販売)し、適正利益が取りにくい」が79.4%(1217社中967社)でトップだった。産業別では、不動産業が55.1%と半数にとどまった一方、「2024年問題」に直面する運輸業は95.3%、建設業は85.1%に達した。企業支援のボリュームや取引先との深化が、産業ごとに異なることなどが影響しているとみられる。
次いで多かったのは「ゾンビ企業が業容よりも過大に人材を抱え、業界内の採用難に拍車をかけている」(24.8%、302社)だった。情報通信業が48.3%に達するなど、成長途上の産業においても新陳代謝のメカニズムが想定より機能していない構図が浮き彫りとなった。また、「ゾンビ企業の幹部が業界団体で幅を利かせている」は15.5%(189社)で、「農・林・漁・鉱業」では33.3%にのぼった。
「その他」は、「偽りのPR資料により顧客を騙している」(産業機械器具卸売業)、「結果的に倒産して工事中のお客様が困っている」(木造建築工事)などの声が寄せられた。
一方で、融資や補助・助成金などがなければ、事業の継続が難しい状況にあると「非常に感じる」企業は10.7%(4584社中491社)だった。「少し感じる」(20.5%、943社)を合わせると、31.2%が融資や資金的支援がないと存続が難しいと回答した。規模別では、大企業で「感じる」は18.4%(439社中81社)なのに対し、中小企業では32.6%(4145社中1353社)だった。業種別では、「感じる」で最も多かったのは「社会保険・社会福祉・介護事業」の68.1%(22社中15社)、「感じない」(全く感じない+あまり感じない)は「保険業」の100.0%(12社中12社)だった。
人口減少や賃上げ、海外企業の台頭などを背景に、生産性や稼ぐ力の向上が注目されるなか、「ゾンビ企業」には厳しい視線が向けられがちだが、同社は一つの基準で支援の是非を判断するのは難しいと指摘。今回の調査でも、ゾンビ企業が市場環境を歪めていると感じる企業が36.2%にのぼる一方で、自社の状況を「融資や補助・助成金がなければ事業の継続が難しい」と感じている企業は31.2%だった。両者では「感じる」業種が異なり、後者では公定価格や物価統制の影響を受けやすい「社会保険・社会福祉・介護事業」などが上位を占めている。利益率・財務内容の見劣りや、資金的な自立(自律)が難しいだけでは、ゾンビ企業と安易に批判できず、各種支援を受けて健全性を指向するのも経営のあり方だとしている。
「全体から吸い上げて補助・助成金を配分するのではなく、吸い上げる税金を少なくするべき」といった意見も寄せられるなど、「ゾンビ企業論」は企業支援や社会のあり方についても一石を投じているとした。
同調査では「ゾンビ企業」を、財務面ではなく「健全な経営状態ではないにもかかわらず、融資や補助・助成金などにより倒産や廃業を免れている企業」と定義。2月1日~8日にアンケート調査した結果を集計・分析した。
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