日本商工会議所と東京商工会議所は2月14日、「中小企業の人手不足、 賃金・最低賃金に関する調査」 の集計結果を発表した。
同調査は、中小企業における人手不足や賃上げの状況、最低賃金引き上げの影響について実態を把握し、意見や要望を同所の活動に生かすことを目的に、2024年1月4日から26日、全国の中小企業6013社を対象に行われた。回答率は49.7%で2988社。このうち、建設業で回答したのは全体の17.3%に当たる516社だった。
「人手が不足している」と回答した企業は65.6%で、3社のうち2社が人手不足の状況であることがわかった。「2024年問題」への対応が求められる建設業については78.9%が人手不足と回答しており、業種別では最も厳しい状況が明らかになった。
人手不足への対応としては、「非正規社員を含めて採用活動を強化する」が8割超えで、最多。生産年齢人口が減少する中、省力化や多様な人材の活躍などの取り組みが求められるが、「事業のスリム化、ムダの排除、外注の活用」は39.1%で、「女性・高齢者・外国人材など多様な人材の活躍推進」は37.3%と4割弱にとどまった。
半数以上が「防衛的賃上げ」
賃上げに取り組む企業は全体的に増加しており、2024年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、6割を超えた。ただし、そのうち「業績の改善がみられないが賃上げを実施する予定」の企業は60.3%であり、半数以上が「防衛的賃上げ」をする予定であることがわかった。
「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、介護・看護業(66.7%)が最も多く、次が製造業(64.2%)、3位に建設業(63.4%)が続いている。建設業では、そのうち60.9%が「防衛的な賃上げ」と回答している。
賃上げ率の見通しについては、「3%以上」とする企業が4割近くに達し、「5%以上」との回答も1割。「3%以上」と回答した企業の割合は、宿泊・飲食業(46.3%)、その他サービス業(39.9%)で4割前後に達し、コロナ禍の影響を強く受けた業種で業況の回復がうかがえる。建設業は、35.1%にとどまった。
業績の改善がみられない中でも賃上げをする「防衛的賃上げ」をする理由として、8割近い企業が「人材の確保・採用」を挙げている。一方、「賃上げを見送る」理由は、「売上の低迷」が55.9%と最多となっている。
2023年10月の最低賃金の引き上げを受け、「最低賃金を下回ったため、賃金を引き上げた」と回答した企業は38.4%と4割近く。一方、人手不足や物価上昇が進む中、「最低賃金を上回っていたが、賃金を引上げた」とした企業は29.8%と、昨年度から5.2ポイント増え、2017年の調査開始以来で最も高い割合を示した。業種別でみると、介護・看護業が最も高い61.5%、次に宿泊・飲食業が58.7%で、建設業は19.2%にとどまった。
現在の最低賃金について、「負担になっている」と回答した企業は65.7%で、昨年度から10.6ポイント増加した。負担感が一番強かったのが宿泊・飲食業の88.3%で、建設業は50.8%と半数を超えた。
最低賃金を下回ったため賃金を引上げた従業員の属性は、パートタイム労働者が83.3%で最多。人件費が増加したことに対して、どのような具体策をとったのかについては、「具体的な対応が取れず、収益を圧迫している」との回答が26.2%もあった。「原材料費等増加分の製品・サービス価格への転嫁」(26.4%)「人件費増加分の製品・サービス価格への転嫁」(25.1%)と価格への転嫁による対応も同程度、見られた。
2024年度の最低賃金改定に対する考えとしては、「引き下げるべき」もしくは「引上げはせずに、現状の金額を維持すべき」と回答した企業は41.7%で、昨年度から8.0ポイント増加しており、過去最高の最低賃金の引き上げの影響があったことが見受けられる。一方、「引き上げるべき」との回答も、同じく41.7%で昨年度に続き、4割を超えている。
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