「広く感じる家にしてほしい」という建て主の要望を取り入れて、玄関やリビングに吹き抜けを設けたところ、当初は喜んでくれたのだが…。日が経つにつれ、徐々に「吹き抜けの窓が拭きにくい」「照明の電球が交換できない」とたびたび苦情の連絡がくるようになってしまった。
工務店社長のKさんが先代の父のもとでまだ駆け出しだった頃の話だ。地元でも仲のよかった、高校の先輩の家の新築を担当することになった。先輩は海外旅行が趣味で、世界各地の美術品や民芸品などを収集しており、新居にもそれらを飾るスペースを設けたいのだという。
そこでKさんは、玄関、廊下、リビング、寝室、書斎などあらゆるところに飾り棚を提案。先輩も大いに乗り気になって、スムーズに打ち合わせが進んでいった。
そんなある日、先輩が新たな相談を持ちかけてきた。「トルコで買ってきたラグを壁に飾りたい」のだという。思案をしたKさんは、当初、独立していた階段をリビングに取り込んで、吹き抜け状にするという変更案を持ち出した。「まだ詳細が固まる前だったので、このくらいの変更はそれほど予算に影響しないと判断しました」とKさん。
「こんなことができるなら、玄関ホールも吹き抜けにしてよ」と先輩も上機嫌でプラン変更を受け入れることに。ここまでは実に理想的な展開だったのだが・・・
この記事は新建ハウジング2月20日号6面(2024年2月20日発行)に掲載しています。
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