名古屋工業大学(愛知県名古屋市)の社会工学専攻(社会工学領域)教授・高度防災工学研究センターの北川啓介さんは、能登半島地震の被災地に、簡易住宅「インスタントハウス」を提供している。北川さんは1月2日から被災地に入り、10棟を輪島市の避難所に提供。今も名古屋市から被災地域に通い、自治体と連携して取り組み続けている。
同大学が研究開発したインスタントハウスは、屋内用と屋外用の2タイプがある。屋内用は段ボール製で、15分ほどの短時間で施工できる。連結することで大きさを自由に変更し、壁や屋根のパーツの切り取り方で温熱環境や光も自由に調整できる。サイズは四角形の0.61畳(一辺1000㎜×高さ2804㎜)タイプから、十角形の4.63畳(短径3078㎜×高さ2374㎜)までの5種類。
北川さんが最初に屋内用インスタントハウスを届けたのは、大きな被害を受けた輪島市の避難所となった中学校で、八角形を3つ、六角形を3つ、大きい四角形タイプの4つを提供した。世帯ごとの寝具や防寒具はまだ不足しており、窓や壁が破壊され、冷たい外気が入り込む避難所を中心にインスタントハウスを引き続き提供している。
屋外用のインスタントハウスは、直径5m・高さ約4.3m、床面積約20㎡の円筒状のテント型で、防炎シートを用いて膨らませ、内側から断熱材(発砲ウレタン)を吹き付けて施工する。床に断熱パネルと絨毯を敷けば、さらなる断熱効果を見込める。被災者や自治体職員らには、実際のインスタントハウスの空間を体感してもらっており、輪島市では仮設住宅としての採用が決定しているという。
1日でも早く届けたい 協力者や寄付を募集中
屋内用、屋外用ともに設置数は増えているが、北川さんは寄贈の準備が整い次第、屋内用2500~3000棟、屋外用500~1000棟を被災地に届けていく予定だ。「被災者は疲弊している。だから1日でも早く行動に移していく」(北川さん)。
ただ、特に屋外用は資材や施工業者の不足が課題となる。震災後、各メーカーの協力から大量に資材が供給され、愛知県内の業者が無償で現地に赴き施工しているが、どちらも足りていない状況だ。北川さんは「大量に同時に施工していく必要がある」とし、初めてインスタントハウスを施工する事業者には、随時デモンストレーションを行う。また「膨らませるテントを加工できる業者の方にも協力をお願いしたい。材料代は捻出できるが、とにかく数がいる。安価にしないと届けられない」と業界に呼びかけている。
また、屋内用の設置に伴いさまざまな備品が必要になる。避難所で生活する被災者にとって、延長コードとLED照明はとりわけ重要だ。北川さんは「LED照明の種類は問わない。インスタントハウスは2m間隔で設置されているため、延長コードは長さ2m以上で三つ又になっている形だと役に立つ。被災者の提供用に約1000世帯は必要になる」と話す。
同大学は1月12日から「令和6年能登半島地震被災地への簡易住宅(インスタントハウス)設置支援」として、寄付の受付を開始した。寄付は一口1000円から。寄付は個人・法人問わず、同大学の各種窓口から受け付ける。金融機関からの振込のほか、大学窓口(財務課出納係)でも受け付ける。
詳細は同大ウェブサイトまで。
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