能登半島地震の被災地では、耐震基準が強化された1981年より前に建てられた木造住宅の倒壊が目立ち、多くの犠牲者が出た。改修や建て替えには所有者の自己負担が生じるためハードルが高い。今回の地震を踏まえ、各自治体では住民からの相談に応じたり、補助事業を拡大したりするなど対応を急いでいる。
長崎県は能登半島地震後の1月中旬から、住宅耐震化に関する緊急の無料相談会を県内8市町で順次開催した。県や市町の職員が改修工事の支援制度や、簡単な自己診断の方法を紹介。県担当者によると、80組以上から相談があり、「石川県の被害の映像を見て急に不安になった人もいたようだ」という。
松山市は、耐震診断・改修補助事業について、昨年12月末に今年度分の受け付けを終了していたが、能登半島地震を受けて追加募集を始めた。市担当者は「耐震診断員の派遣要請が極端に増えた」と話す。
2024年度予算編成に当たり、支援を拡充する自治体もある。東京都練馬区は、耐震診断費用の補助率を4分の3から原則全額に、改修は3分の2から4分の3へと引き上げる予定だ。区内には木造住宅の密集地域が残り、倒壊や火災延焼などの恐れがある。前川燿男区長は「東京圏でも能登半島地震と同程度の地震は近い将来に必ず起き、人ごとではない」と強調する。
山梨県も、24年度予算で耐震改修に対する補助額の上限引き上げを検討している。耐震診断は市町村との連携により既に無料で受けられるが、「現行の耐震基準に満たない住宅約4万戸のうち3万戸以上が診断すら受けていない」(担当者)といい、支援制度の周知に努める考えだ。
国土交通省によると、現行の耐震基準を満たしている住宅の割合の全国平均は18年時点で87%だが、今回の地震で家屋の倒壊が多数発生した石川県珠洲市では51%(19年3月)、輪島市では45%(19年12月)にとどまるなど地域差があるのが現状。同省は30年までに耐震性が不十分な住宅の解消を目標としている。
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