能登半島地震から、きょうで1カ月。元旦に突如襲った未曾有の大震災による混乱は、いまだ続いている。
新潟県によると、1月31日時点で、住宅の被害状況は1万3086棟に上っている。具体的には、▽全壊90棟、▽半壊1894棟、▽一部損壊1万1088棟、▽床上・床下浸水14棟―。新潟市西区では、「繰り返す災害」とも言われている液状化による被害も深刻だ。地面の隆起や陥没が多発し、住宅が傾く被害も多数報告されている。新潟市内には生活基盤の再生がままならない住民が多くいる。
工務店支援を手がける新潟家守舎(新潟市)の小林紘大さんは、こう話す。
「テレビ中継が入るのは限られた地域に過ぎません。多くは被害を残したまま報道もされず、今も訪問調査や補助制度、補修を待ち続けるしかないという現実があります。その場所で暮らす人々が1日でも早く希望を抱き、安心して過ごせるよう、工務店としてできることを考え行動し続けたい」
「今回の地震を『悲しい出来事』で終わらせることなく、伝達・復興・対策を実施していきます」
正月の光景が一変した悪夢の元旦に何があったのか―。建築士でもある小林さんが、体験した現場のリアルを時系列でリポートする。【新建ハウジングDIGITAL】
■2024年1月1日 16:10
地震が起きた時、私たち家族は初詣のために新潟市中央区「白山神社」を訪れていました。人混みの中、参拝に訪れた方のスマートフォンが一斉に鳴り、緊急地震速報が発せられました。
揺れた瞬間、私は境内にいました。あたりは大混乱でしたが、幸い怪我はありませんでした。
新潟で暮らす建築士として、地震当日〜数日間の動きと被害の状況を、ここに記録させていただきます。今回の地震から得た学びをこれからの建築等に活かし、より多くの方が安心して暮らせる住まいづくりを進めていくことが、私の使命です。(株式会社新潟家守舎・小林紘大)
■当日
2024年1月1日 18:00
・夕飯の調達に近所のスーパーへ
しかし「本日は臨時休業」とのこと。ガラス越しに店内を見ると、陳列棚から散らばった商品で足の踏み場もない状態です。
その後、コンビニへ向かいました。開いていたものの、足元には赤ワインの海が広がっていました。トイレは断水、惣菜系も品薄です。
2024年1月1日 18:30
・車で自宅アパートに帰宅
車内で、あらゆるメッセージツールで親戚や社員、パートナーのフリーランスの方の安否確認をとっていきます。カーナビのテレビからは「津波です!逃げて!」とアナウンスする声が繰り返し聞こえてきます。
アパートに戻ると、電気は点くものの水とガスが止まっていました。
2024年1月1日 20:30
・自宅で情報収集&支援先工務店へ連絡
支援先工務店へは、安否を確認すると同時に下記をお送りしました。災害時に行うべき工務店→オーナー様への対応をまとめた資料です。
チャットツールで最低限の連絡を取りつつも、Xやテレビを見続けていたら気が重くなってしまい、早めに就寝しました。
■2日目
2024年1月2日 10:00
・情報収集
引き続き安否確認と、馴染みの市議会議員と連絡を取りながら情報収集を進めていきました。市議会の皆様には日頃から意見交換などお世話になる場面が多いですが、こういった非常事態でも最新情報を共有してくださり、とてもありがたかったです。
2024年1月2日 12:00
・西区の実家へ
1日の時点で、母から祖父を連れて近くの中学校へ避難したと連絡をもらっていました。「中学校から戻ったら玄関ガラスが割れていた」と続報があり、実家に向かいました。
2024年1月2日 20:00
・オーガニックスタジオ新潟の相模社長と連絡を取る
私が以前勤めていたオーガニックスタジオ新潟の相模社長から、新潟市西区善久エリアの被害が大きく、家も傾いているとの情報をいただきました。
■3日目
2024年1月3日 9:00
・西区善久へ現地調査に向かう
オーガニックスタジオ新潟の設計部時代に担当したお宅を訪問しました。
2024年1月3日 11:00
・新潟市市役所へ、実家の罹災証明を提出
この時点で証明提出は1000件を超えていたそうで、役所内は混乱気味。いつ訪問調査ができるかわからないとのことでしたが、対応してくださる公務員の皆様に感謝です……!
2024年1月3日 18:00
・市役所の若手チームからエリアの被害状況を伺う
公務員として勤める友人らとも、messengerで情報共有していました。
■4日目以降
2024年1月5日
・支援先工務店がお宅を訪問するとのことで同行
2024年1月10日
・中学の同級生から連絡。2年前に某地域ビルダーで建てた新築戸建てが傾いたとのことで様子を見に向かう
2024年1月13日
・「住宅の応急修理業者向け説明会」に参加
中原市長により、新潟市では早々に独自の支援が決定しました。
2024年1月16日
・「NAMARA MIX【FM-NIIGATA】」ラジオ出演
事業の話と合わせて、今回の地震被害・液状化などについてお話しさせていただきました。
ひとり工務店には下記の形でオーナー様情報と対応方法をまとめた資料を作成して提供しました。
■まとめ
2日以降いくつかの工務店と連絡を取って分かったのですが、被害への対応は工務店によってバラバラです。5日時点でお宅訪問できる工務店もあれば、連休明けになってしまうところもあります。この数日間で「災害に強い工務店のあり方」を考えさせられました。
また、地域によって「オーナーさんに被害がなかった」という工務店では、地震の状況をほとんど知らないケースも見受けられました。やはり当事者にならないと、情報収集のレベルが異なるのだと痛感します。
テレビ中継が入るのは限られた地域に過ぎません。多くは被害を残したまま報道もされず、今も訪問調査や補助制度、補修を待ち続けるしかないという現実があります。その場所で暮らす人々が1日でも早く希望を抱き、安心して過ごせるよう、工務店としてできることを考え行動し続けたい。そのために、SNSや関係者とのコミュニケーションで自ら情報を掴みに行く姿勢は非常に重要だと考えます。
新潟家守舎では、今回の地震を「悲しい出来事」で終わらせることなく、伝達・復興・対策を実施していきます。そして、これからも新潟県を守っていける存在でありたいと、強く思っています。
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