住友林業ホームテック(東京都千代田区)はこのほど、AIを活用した「断熱改修工事提案システム」を開発した。東京・名古屋・大阪エリアで利用を開始し、全国の省エネ基準地域区分5・6・7地域を対象に展開していく。同システムを活用した効率的・効果的なリフォームにより、既存住宅の性能向上と長寿命化を図ることで脱炭素社会へ貢献していくとする。
同システムは、建物全体から部分的な改修まで改修範囲に対応して、効率的に断熱性能を調査し、AIを活用して効果的な断熱改修を提案するもの。改修工事前後で推定した断熱性能値をスコア(点数)化してその効果をわかりやすく提示する。
具体的には、室温や外気温から、既存住宅の断熱性能を簡易に計算するシステム「スマートワトソン君2」などを用いて熱損失係数(推定Q値)算出。室内の熱画像をAIで解析して、断熱性能の弱点部位(床・壁・天井・窓など)を特定する。そのうえで、効果的な改修に必要な部材を断熱等性能等級4または5に適合する性能値の資材候補から選択し、最適な改修工事を提案。改修前の熱損失係数に、改修により断熱性能が向上する見込み値を加えてスコア化することで、顧客の求める性能や改修範囲、価格などの条件に合った有効な断熱改修工事を提案する。
建築分野では、脱炭素化に向けて住宅ストックの性能向上と長寿命化が求められている。一方で、既存住宅の断熱性能の確認は容易ではなく、新築時に比べ掛かる費用が高くなりがちなため、断熱改修が進まずにきた。そういった背景を受け、効率的かつ効果的な調査で簡便に断熱改修の提案ができる同システムの開発に至ったという。
今後は、撮影された熱画像から、深層学習を用いて開発した物体認識と温度データの解析による低温部位の抽出および断熱性能の弱点部位を発見するアルゴリズムの精度の向上を目指す。また、現状は断熱性能向上の評価を加えていない改修工事(階間断熱材など)や木製家具などについても断熱性能向上への影響を調査検証して評価を見直す予定だという。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。