東京商工リサーチ(TSR、東京都千代田区)は1月16日、2023年の建設業の倒産動向調査の結果を発表した。2023年の建設業の倒産は1693件(前年比41.7%増)、負債総額は1843億1000万円(前年比54.4%増)で、いずれも2年連続で前年を上回った。
倒産件数が1600件台となったのは、2016年(1605件)以来7年ぶり。増加率が40%を超えたのは1991年(55.4%増)以降初で、増勢基調が鮮明となっている。負債総額は2015年(1935億3700万円)以来、8年ぶりに1800億円を上回った。負債10億円以上の大型倒産は9件(前年10件)と前年を下回ったが、負債5億円以上10億円未満が40件(同38件)、1億円以上5億円未満が358件(同254件)とそれぞれ増加し、負債合計を押し上げた。
業種別では、「総合工事業」が680件(前年比31.7%増、構成比40.1%)と最も多く、次いで「職別工事業」634件(同51.6%増、同37.4%)、「設備工事業」379件(同45.7%増、同22.3%)が続いた。下請け色が強く、価格転嫁が難しい「職別工事業」「設備工事業」の増加率の高さが目立つ。
細かく分類した小分類別では、「建築工事業」254件(前年比30.2%増)、「土木工事業」216件(同26.3%増)、「管工事業」163件(同34.7%増)、「とび・土工・コンクリート工事業」147件(同72.9%増)の順となった。
都心部や地方都市部の再開発工事や新型コロナの5類移行によって経済活動が本格化し、受注環境は民間工事を中心に回復基調にあるが、新型コロナ関連倒産が前年の約1.5倍(421件)となるなど、コロナ禍の影響を払拭できない企業も多い。さらに、コロナ禍で見送られた工事分の受注が急増したため、資金需要が増加するとともに人手不足が深刻化。労務費や外注費など各種コストアップ要因が小・零細企業の経営を圧迫し、「物価高」倒産は前年の2.7倍(130件)に急増している。特に北海道では、新幹線の延伸工事や先端半導体メーカーの進出など大型工事が目白押しながら、倒産件数が前年比200.0%増を記録。資材価格の高騰や人手確保に伴う労務費の上昇で採算が悪化し倒産するケースがみられた。
2024年4月にはゼロゼロ融資の返済がピークを迎えると同時に、時間外労働規制が適用される「2024年問題」によって、資金繰りが一段と厳しくなる企業が増えるとみられる。同社は、経営が疲弊した企業を中心に倒産件数が増加するほか、先行きの不透明感から事業継続を断念するケースが増える可能性が高まっているとしている。
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