国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)および建築研究所が1月12日に公表した、能登半島地震による建物の火災被害調査報告によると、石川県輪島市河井町で起きた市街地火災の延焼スピードは、阪神淡路大震災(1995年)と同程度の速さであったと推定された。
同調査は、今回の地震で報告された17箇所の火災のうち、大規模な市街地火災に発展した輪島市河井町の火災状況についてまとめたもの。現地調査に加えて、人工衛星データを利用した調査や、ウェブ上の情報に基づいた分析結果も併せて報告している。なお、現地調査報告については目視により屋外から把握した情報を収集したものであり、建物内部の調査や消防隊・消防団、住民への聞き取り調査については今回実施していない。
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輪島市河井町で被災した市街地のうち、焼失区域の面積は約5万800㎡、建物数は約300棟と推定。同区域では建築基準法第22条に基づき、建物の屋根を不燃材料で造ること、または不燃材料で葺(ふ)いて火の粉による延焼を防止すること、木造建物の外壁を準防火性能に適合する構造にすることが求められていた。
火災の延焼の速さに関する調査では、報道機関や個人投稿によるウェブ上の発信情報を時系列に並べて延焼速度を分析。その結果、火災が発生したと推定される地点付近から北側への延焼速度は約30m/h、朝市通り南側区域での東側への延焼速度は約20m/h、北側地区での東側への延焼速度は約40m/hであったと推定された。阪神淡路大震災の市街地火災と同程度の速さで、強風により3万213㎡が焼失した糸魚川市火災(2016年)よりも遅かったと考えられる。
焼け止まり要因は離隔距離か
現地調査では、焼失した区域の中で焼け止まり要因となった戸建住宅に着目。ある住宅は、対面する焼失区域から建物までの最短離隔距離は11.2mで、南面に強い加熱を受けていた様子がみられた。外壁面(窯業系サイディング張り・金属サイディング張り)には目立った損傷は見られなかったが、1・2階の窓の複層ガラス(アルミサッシ)の屋外側に損傷が発生。西面の雨どいは溶融していた。
他の焼け止まり要因となった建物についても、最短離隔距離が11.6m、8.9mなどと比較的大きかったことから、焼け止まりの最大要因は離隔距離であったとしている。一方、最短離隔距離が1.5m、0.9mなどと小さい場合でも焼け止まりが確認された例もあり、これについては消火活動の効果ではないかとみている。
焼け止まり要因となった戸建住宅の外壁は、窯業系サイディング張り、金属サイディング張りのほか、ボード下地塗仕上げ(変色・亀裂あり)、トタン板張り(損傷なし)、木ずりモルタル塗り(地震動により剥落)などだった。
■写真等の出典
国総研ホームページ「2024年能登半島地震による建物等の火災被害調査報告(速報)」
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