埼玉県南部と東京都の一部を商圏とする増木工務店(埼玉県新座市)は、2023年に山形県米沢市にLCCM住宅を建設した。「土を残して、緑を植える自然と共に生きる暮らし」を掲げる家づくり・まちづくりに注力する同社が、なぜ本社のある埼玉県新座市から315km離れた場所に家を建てたのか。その経緯と二拠点での事業の可能性について、社長の齋藤洋高さんと技術営業・広報の山口愛莉沙さんに話を聞いた。
菜園住宅への取り組み
2018年11月に販売を始めた15区画の分譲住宅「新農住コミュニティ野火止台」に、増木工務店の目指す家づくりの姿勢がよく表れている。800坪の敷地に、約80種の樹木を植えた緑道、果樹園、共用・専用の菜園、防災広場、15棟の戸建て住宅で「風景」を形成。住宅はすべて許容応力度計算による耐震等級3、高い断熱気密性能、OMソーラーのパッシブエアコン1台による全館空調を備え、認定長期優良住宅を取得している。2階建ての内部は各階ワンルームで、暮らしに合わせて自由に仕切ることができる。
この頃出合ったのが、2017年公開のドキュメンタリー映画『人生フルーツ』だ。建築家の津端修一さんと妻の英子さんの高蔵寺ニュータウン(愛知県春日井市)での日々―200坪のキッチンガーデンで野菜や果実を育て、三食とおやつ、保存食をワンルームの丸太小屋で調理して食べ、くつろぎ、仕事をし、休む―そんな夫婦の暮らしは、同社が目指してきた「緑を残すまちづくり」と重なった。そこで「新農住コミュニティ野火止台」では、緑や畑がすぐそばにある暮らしの価値を発信・共有するため、『人生フルーツ』の上映会を延べ20回ほど開催。同じ価値観を持つ世帯から強い共感を得た。
社長の齋藤さんは、自社が提供してきた分譲住宅に「十分満足している」と話す一方で・・・
この記事は新建ハウジング1月20日号8・9面(2024年1月20日発行)に掲載しています。
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