「生まれ育ったまちにかつてのにぎわいを取り戻し、若者が『ここで暮らしたら楽しそうだな』と思うようなエリアにしたい」。新潟市秋葉区の新津本町に本社を置く馬場工務所社長の馬場一也さんは、そう地元への思いを語る。同社は「にいつ住宅研究所」を屋号とする専門部署を設け、一定のエリア内で、リノベーションによって空き家を店舗などに再生して地域活性化につなげる“リノベまちづくり”に取り組む。昨年10月には、まちづくりのシンボルにも位置づけるJR新津駅東口のすぐ近くの緑豊かな敷地に、古い土蔵や倉庫をリノベした飲食店をオープンさせた。
店舗がオープンしたのは、大正時代に開院した地元の診療所・髙塚医院の敷地約5000㎡の一角。診療棟や併設された住宅(母屋)、リノベした土蔵、倉庫などの建物群を取り囲む“森”のようにケヤキの大木などの木々が立ち並ぶ。以前から、精力的に地元のまちづくりに取り組む馬場さんの姿を見てきた、同院理事長で医師の髙塚務さんから馬場さんに「地域活性化のためにこの場所を有効活用できないか」と相談が持ちかけられたことをきっかけに、“森の再開発”プロジェクトがスタートした。
築100年を超える土蔵をリノベし、あわせて一部増築した店舗には、新鮮なマグロがウリの食堂が、築60年の倉庫をリノベした店舗には県内で人気のフルーツサンドを提供するフルーツパーラーがテナントとして入居。テナント誘致からプランの策定、リノベの工事までワンストップで、にいつ住宅研究所が手がけた。設計については、「リノベの魅力を最大化して広く発信したい」(馬場さん)との狙いから、同じ地区内に事務所があり、リノベの実績も豊富な神田陸建築設計事務所に依頼した。
地域ににぎわいを生む“森の再開発”というコンセプトも相まって、2店ともオープン直後から注目を集め、多数のメディアに取り上げられたこともあり、常に行列が絶えない人気店となっている。馬場さんは今後、緑豊かなこの森でマルシェやキャンプイベントなどを開催し、さらに・・・
この記事は新建ハウジング1月10日号17面(2024年1月10日発行)に掲載しています。
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