やや回復の兆しも見えるとはいえ、相変わらず集客・受注難は続いている。そもそも、少子高齢化や生活者の変化によって住宅需要自体が減少していく中、集客や受注を獲得するためには何が必要なのか。工務店のマーケティング担当者と集客・広報の専門家、5人の“マーケティング賢人”を集めて議論した。(進行:新建ハウジング編集部 荒井隆大、佐野元基)
「目標から逆算して広告宣伝費を考えよ」
―集客・受注難の現状をどう捉えているか。
古川 肌感覚では、業界全体で2~3割は集客が減っていると感じる。弊社の場合、おかげさまで集客数は前年比で増加となったが、やはり人口減や物価上昇の影響か、顧客獲得単価(CPA)は増加している。
コマツ 総合住宅展示場の集客自体は、減っているといっても1割程度の減少だ。しかし市場は2~3割シュリンクしている、というのが我々の肌感覚。なぜ差があるのか。それは工務店が、集客が減ったのに広告宣伝費を増やしていないから。需要が減っている中、変わらずに競争しているのだから、集客が減るのは当然だろう。
古川 自社の広告予算をちゃんと把握していない工務店は多いのでは。棟数の目標から逆算してどれだけのリード数が必要か、そのためにはどれだけのコストを割けるのか、順序立てて考えるべき。
江島 私も年間の広告宣伝費の割合や、どれだけ集客に投資すべきかを理解している工務店が少ないと感じる。年間30棟以下の規模になると「広告宣伝費の比率は低いほうがいい」という風潮もあるようだが、集客を確保するためには現状の売上に対し、どれだけ広告費を投資すべきかを考える必要がある。
コマツ 確かに財務上適切な割合はあるが、集客の視点からは一概に言えない。最近はCPAばかり注目されるが、CPAが1年で半分になる、つまり実力がいきなり倍になるわけはない。あくまで契約単価で判断すべきであって、投資できるなら投資したほうがいい。
古川 最終的にどれだけの営業利益を残したいかを考えたうえで、投資できるだけ投資すればいい。もちろん、広告宣伝費の比率は低い方がいい、というのはその通り。ただ中長期的に、広告宣伝費の比率が低いままで企業として存続できるかは別の話だと考える。
「目標から逆算して広告宣伝費を考えよ」
―短期的に集客・受注状況を改善する手は。
丹野 Instagramをやっているなら、OB顧客に、自社アカウントにメンションする形でストーリーズに口コミを投稿してもらうのもいい。お客様のフォロワーにもリーチできるし、メンションしてもらうことで自社アカウントの評価も高まる。また、DMで見学会やイベントを案内するのもおすすめ。インスタのDMは、開封率が6~7割、返信率が2割程度と高く、来場に結びつきやすい。
鈴木 拡散しやすいショート動画(InstagramのリールやTikTok)も、まだ手を付けていないのならやったほうがいい。ルームツアーやスタッフ紹介など、すぐにつくれるコンテンツがある。
丹野 Instagramでも主流は画像のフィード投稿から・・・
この記事は新建ハウジング1月10日号10・11面(2024年1月10日発行)に掲載しています。
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