国土交通省は1月9日、建築士事務所での設計業務などの適切な実施を推進するため、業務報酬基準(建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準)を5年ぶりに改正し、公布・施行した。この改正に合わせて、「業務報酬基準ガイドライン」の改訂も行われた。一方で、BIMを活用した設計業務に関する基準や、耐震工事以外の改修工事の設計に関する基準の策定については、次回に見送られた。
今回の改定では、①戸建住宅を含めた略算表、②難易度による補正方法、③省エネ基準への適合の全面義務化への対応、④複合建築物に係る業務量算定方法、⑤工事監理業務の業務量―について見直しを実施。23年10月に実施したパブリックコメントの結果を受けて、設計期間変更や工期延長に伴う追加の設計・工事監理が追加的業務であることを明確化している。
略算表については、前回の改正時に見直しが行われなかった戸建住宅の業務量について、「実態から大きくかけ離れている」との指摘があったことから、実態調査を踏まえて改定を行っている。補正を行う際の時易度係数についても、戸建住宅と戸建住宅以外の係数を分けて示した。例えば「木造の建築物(総合)」の場合、戸建住宅以外の難易度が「設計:1.08」、「工事監理等:1.13」であるのに対し、戸建住宅はともに「設定なし」としている。
さらに2025年に省エネ基準への適合の全面義務化が行われることを踏まえ、省エネ基準への適合を条件とした業務人・時間数を示した。設計・工事監理の標準業務に「省エネ基準への適合に係る設計検討」「設計図書等の作成(省エネ計算、省エネルギー適合判定を含む)」を追加している。
近年増加している「複合建築物」の略算方法については、用途の組み合わせ、建築物の構造、空間的な複合の仕方など、多様なパターンが想定されることから、略算方法として一律のルールを設定することは困難であると判断。新基準では、建築物の運用方法に応じて分けていた算定方法を一本化した。
工事監理業務の業務量については、実態調査により把握した「工事期間」 「定例会への出席頻度」「現場常駐の可否」などの集計結果を参考資料として示し、「通常と著しく異なる場合は、実情を考慮した実費加算方式を用いることが望ましい」との記述を追加している。
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