名古屋工業大学・高度防災工学研究センターの北川啓介教授はこのほど、能登半島地震で被災した輪島市との提携により、輪島中学校の避難所に同大学で開発した「屋内用インスタントハウス」10棟を提供した。
「屋内用インスタントハウス」は、体育館など屋内の避難所などで使用することを前提とした簡易住宅。避難所ではプライバシー確保のためダンボールブースなどを用いることが主流となっているが、今回の製品は防寒への配慮から、天井を付け加えている。他にも、▽15分で組立てが可能▽扉・窓により光環境の調整が可能▽ハウスとハウスの連結が可能▽工場での加工が短期でできる―などの特長がある。
北川教授は同製品を、12月に名古屋で開催された「第11回中部ライフガードTEC2023」に、「日常利用も可能な備蓄用インスタントハウス」として出展。能登半島地震の発災後に、研究室でストックされていた資材をそのまま輪島市内に運び入れた。
教授によると到着時、輪島地方では停電と断水が3日間続き、被災者はまるで冷蔵庫のように冷え切った避難所の中で耐え忍んでいたという。ハウスの組立て作業は、家が全壊したという幼稚園児や避難している小学校低学年の子どもらと共に実施。完成後、子どもたちの間で「おうちができた」と歓喜の声が上がったと話している。
屋外用をLIFULL ArchiTechで販売
同大学では、今回提供した屋内用製品以外にも、屋外で利用できるグランピング用の「インスタントハウス」や、避難所などで隔離施設として活用できる「インスタントシェルター」を開発。LIFULL(東京都千代田区)とグループ会社であるLIFULL ArchiTech(同)で販売している。
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屋外用の「インスタントハウス」は、送風機で気球のように膜を膨らませて使用する簡易住宅で、内面に空気含有量の高い断熱材を定着させることにより、優れた断熱性や遮音性を発揮。寒暑、風雨、積雪、地震、強風などの外的要因の影響を受けにくい仕様となっている。これまでにトルコ・シリア大地震、モロッコ大地震の被災地に提供された。
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