公正取引委員会は12月27日、2022年度から23年度に掛けて実施した独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する特別調査(書面調査、立入調査、フォローアップ調査)の内容を取りまとめて公表した。
この調査により、価格転嫁の協議を行う必要があることが発注者に認識されていない実態が明らかとなった。価格転嫁の必要性について示した「独占禁止法Q&A」の内容を理解していなかったという発注者も多く、「注意喚起文書が送られてきて初めて考え方を理解した」「発注者である当社が価格交渉の場を設ける必要があることが分かった」との回答が寄せられたという。
総合工事業への注意喚起325件
今回の調査では、「独占禁止法Q&A」の中で示される、価格交渉に関する協議を行わずに取引価格を据え置くなどの行為が認められた発注者8175者に対しては、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書が送付された。全回答に占める送付対象者の割合は、22年度が21.2%だったのに対し、23年度では17.1%となり、4.1ポイント減少している。
注意喚起文書の送付が多かった業種は、情報サービス業、協同組合、道路貨物運送業、機械器具卸売業、総合工事業、建築材料・鉱物・金属材料等卸売業。このうち総合工事業は325件、建築材料・鉱物・金属材料等卸売業は309件が対象となった。
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全体的に一次、二次と取引段階が進むにつれて、価格転嫁の割合が減少する傾向も確認された。特に総合工事業のように多重下請構造が存在するサプライチェーンでは、価格転嫁が円滑に進まない状況が見られる。
具体例としては、総合工事業者A社が建設工事・設計施工管理業務の一部を複数の総合工事業者に委託した際に、見積り算定の基礎となる工事単価の引上げ要請がなかったことを理由に、コスト上昇分の反映を協議することなく、工事単価を据え置いていたというものがあった。
今後の取り組みとしては、①「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(11月29日公表)の周知、②相当数の取引先との間で協議を経ない事業者名の公表、③価格転嫁状況の調査の実施、④優越的地位の濫用行為の情報収集・審査と、事業者名の公表を伴う命令、警告、勧告などの厳正な執行、⑤官房審議官(取引適正化担当)の創設と優越Gメンの増員―を実施する。
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