YKK AP(東京都千代田区)の魚津彰社長は、同社が都内で25日に開いた来年度の方針説明で、2024年度にトリプルガラスの高性能木製窓を上市する方針を示した。まずは高性能を売りにする地域工務店に訴求していく。
新たにAPWシリーズにラインナップする。構造はヒノキ集成材とアルミの押し出し材でカバーするアルミクラッド仕様。価格は「APW330」の2倍程度で調整するとみられる。魚津社長は同木製窓で、数年以内に全体の2割程度まで押し上げたい意向を示した。
同日に公表した2023年度(4-3月)の業績見通しでは、2023年度の国内の売上高は前年度に続いて5000億円を超え、5449億円(計画比99%、前年比107%)になると推定。海外売上高も計画比103%、前年比104%に達する見込み。営業利益は国内が前年比で83億円増加し、海外と合わせると98億円増の276億円となる。
国内事業では、住宅事業のうち新築の推定売上高が前年比105%を達成。中でも高断熱化、高付加価値化といった高単価商品の売上が伸びた。樹脂窓の推定売上高は前年度比で123%、アルミ樹脂複合窓は111%となる見込み。増改築では、補助事業に対応した断熱リフォーム商品の販売強化により、推定売上136%を達成。商品別では、樹脂内窓の「プラマードU」が256%、外窓の「マドリモ」が173%と大幅に伸長した。
エクステリア事業は前年度比101%で着地する見込み。ウォールエクステリアは新築の減少で苦戦。コロナ禍以降、「高さのあるフェースにより、外からの視線を遮りながら、昼または夜の風景を楽しむ傾向が見られる」(魚津社長)という。カーポートは同106%、門扉・フェンスは同102%と推定した。
ビル事業は首都圏強化、改装提案強化を推進。新築は床面積が92%程度だったが同102%を達成した。改装は築30年以上のマンション改修と長寿命化改修などの好調により同108%に到達する見込み。
魚津社長は「この2年間で二度にわたる住宅の価格改定を行い、その効果が4月から出てきた。さらに3省による補助金事業が後押しとなり、この数字が得られた。堀(会長)が進めてきた持続的成長により、増収増益も達成できるだろう」と話した。
海外事業の推定売上高は、北米でコマーシャルが前年比103%、レジデンシャルが同107%となり、トータルで106%に達する見込み。レジデンシャルでは、樹脂窓の新工場立上げに向けて受注を強化した。中国では中級市場での拡販および改装事業の強化により同110%、台湾では集合住宅市場での拡販などにより同115%、インドネシアはノックダウン商品の拡販により108%となるなど、いずれも伸長が見込まれる。今後の事業戦略では、12月に子会社化したタイ最大手のCWメーカー「YHSインターナショナル社と「サイアムメタル社」により生産強化を図り、アジア地域での事業拡大とグローバルでの競争力の強化を目指す。
需要受け生産ライン大幅増
国内の生産強化に向けては、滑川製造所に約21億円を投資し、樹脂窓「APW430」の生産ラインを増設。全国向けの生産能力が前年度比約1.4倍となった。納期の遅れが出た内窓「プラマードU」については、全国で生産設備を増設し、生産能力を約3.0倍に上げた。さらに24年度には約20億円の投資により、栃木工場、九州製造所、兵庫工場の生産ラインを増設する予定で、これにより約4.1倍の生産能力向上が見込まれる。首都圏向けでは、23年7月に操業開始した埼玉工場新建屋により、24年度の生産能力を約1.3倍に引き上げる予定。
2024年度の計画としては、10月に黒部製造所(富山県黒部市)内に「YKK AP30ビル」と「YKK AP技術館」を開設する予定。「YKK AP30ビル」は、自然環境と社員の健康に配慮した「杜の中のオフィス」をテーマとした社屋で、同敷地内にある「YKK50ビル」の機能を移管する。「YKK AP技術館」は、YKK APの歴史に関する展示施設。1959年竣工のアルミ押出工場を断熱改修リノベーションした。再生可能エネルギーの導入や工場排熱エネルギーの再利用を行うことで省エネを実現する。
魚津社長は、4月に就任した際に示したビジョン「エボリューション2030」についても説明した。まず、地球環境への貢献を目指し、太陽光発電の導入を約1.8倍に強化。黒部越湖製造所に風力発電、黒部製造所に小水力発電を導入する。さらに富山資源循環モデルに参画し、アルミリサイクル100%に向けて技術を確立する。
新商品では、24年度にビル用のアルミ樹脂複合窓も発売。グローバル展開を見据えた革新的な商品・技術の開発拠点として、「YKK AP R&Dセンター東京」を設立する。働きやすい職場環境づくりへの投資としては、23年度の昇給率を約6.5%に、24年度初任給を平均10%程度上昇させる予定。
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