電力の安定供給を目指す電力広域的運営推進機関(OCCTO)はこのほど、研究機関3者による「2040・2050年の需要見通し」を公表した。11月30日に開かれた「第2回将来の電力需給シナリオに関する検討会」内で示されたもの。
このうち電力中央研究所による想定では、2050年度までの基礎的電力需要は、産業・業務部門で増加し、家庭部門では世帯数減により減少する見込みが示された。追加要素としては、データセンター、水素製造などでの電力需要の増加を挙げた。さらにカーボンニュートラル(CN)社会実現に向けて電化が進展することから、家庭部門ではヒートポンプの導入が進むと予想している。
同研究所では、2040年代以降の日本経済について、国内需要の減少からマイナス成長局面に入る一方で、世界経済の拡大に伴って輸出が拡大すると予測。素材系産業の生産量は減少するが、半導体を含む電子部品や自動車などの機械系産業が外貨を稼ぐ役割を果たすと見通した。
これらの背景から、2050年度までにエネルギー消費は、産業部門では年率0.3%低下、業務部門では同1.0%低下、家庭部門では同1.0%低下すると予想。一方、電化需要は産業部門が30%台、業務部門と家庭部門が60%台、運輸部門(鉄道・船舶・航空除く)が20%台にまで上昇するとの見通しを立てた。
水素製造で消費電力増加
また、地球環境産業技術研究機構(RITE)による分析では、蓄電池の増大、電気自動車(PHEV・BEV)の拡大、CCUS/DACCS(二酸化炭素回収・貯留技術/直接空気回収)、水素・水素系エネルギーの活用に伴って、電力消費量が増大すると予想。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)のシナリオ想定では、テレワークの増加により移動が低減する予想から、長期的な建築物の稼働率上昇、必要な空間面積低減による鉄鋼・コンクリートの低減を見通した。他に、建築物の高寿命化が40%進むことにより、セメント・鉄鋼製品の需要がそれぞれ3%減少するとの予測を立てた。
デロイトトーマツコンサルティング合同会社は、2050年カーボンニュートラルの実現をシナリオの前提として、①比較的安価な海外燃料を積極的に輸入(自給率低位ケース)、②海外燃料を輸入しつつも国内再エネを一定程度導入(自給率中位ケース)、③国内再エネを積極的に導入(自給率高位ケース)―の3つのケースを前提に将来の電力需要を推計。2050年に自給率が増加するにつれて各部門の電化が進んだ結果、電力需要が大きく増加すると予想した。また他の2者と同様に、特に水素製造による消費電力が増加するとの見通しを示している。
今回公表された「需要見通し」は、需要検討に入る前の段階のもので、各社の知見に基づいた想定となっている。2024年3月までに6回の作業会と2回の検討会を行った後、本格的な需要・供給想定を開始する。
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