自民、公明両党は2024年度与党税制改正大綱で、岸田政権が掲げる「成長型経済への転換」を支える税制面の柱として、賃上げ促進税制の拡充と新たな投資減税制度の導入を盛り込んだ。賃上げに積極的な企業の法人税負担を軽くして人材投資を促し、持続的賃上げに不可欠な収益力強化へ、半導体など重要物資の生産を10年間減税。賃上げと成長投資の活発化でデフレ完全脱却を目指す。
賃上げ税制では、女性活躍や子育て支援に積極的な企業への法人税控除の上乗せ措置を創設。大企業は最大35%、中小企業は45%と、それぞれ現行の控除率から5%引き上げる。中小が赤字で使えなかった控除分は5年間繰り越しを認め、期間中に黒字になれば優遇を受けられる制度も設け、賃上げの裾野を広げる。
また、控除を受けるための大企業の賃上げ要件について、前年度比で3%以上と4%以上という現行区分を3%、4%、5%、7%に細分化。最も大きな控除を受けるには一段と高い賃上げが必要な仕組みとした。
戦略分野への投資を誘導するため、半導体や電気自動車(EV)などの生産・販売量に応じた減税制度を整備。EV1台につき40万円、「持続可能な航空燃料」(SAF)は1リットルにつき30円と、物資ごとに控除額を設定し、控除を受けられる期間も最大4年間繰り越せるようにする。
国内で研究開発された特許や人工知能(AI)関連プログラムの著作権といった知的財産から生じる所得を優遇する「イノベーションボックス税制」も25年度から施行。知財の売却などで得られた所得の30%を控除する仕組みで、適用期間は7年間とする。
一方、大企業による賃上げや成長投資の着実な進展へ、これらの取り組みに消極的な企業が税優遇を受けられなくなる仕組みも強化。3年間の延長とともに、必要な設備投資の要件を厳しくした。大綱には減税措置の実効性を高めるとして、「今後法人税率の引き上げも視野に入れた検討が必要」と明記した。
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