国土交通省は2024年1月15日まで、木造建築物の省エネ化による建築物の重量化に対応するために必要な壁量基準の見直し案について、パブリックコメントを募集している。
同案は2022年10月にも公表されたが、その後も建築物の仕様の多様化に適確に対応するため検討が行われていた。小規模の木造建築物を含め、あらゆる建築物の仕様に応じた必要壁量・柱の小径が算定できるよう、算定式などを見直している。さらに必要壁量を容易に算定できるツールの整備も行った。国交省では今回聴取する意見などを参考にして、2025年4月に予定される改正建築物省エネ法・建築基準法の施行に向けた基準の整備を引き続き行う。
早見表・表計算ツールなどを整備
壁量基準の見直しでは、これまでの「軽い屋根」「重い屋根」の区分により必要壁量を算定する方法から、算定式を使って建築物の荷重の実態に応じた必要壁量を算定する方法に変えた。これに併せて、表計算ツールおよび採用する仕様を選ぶことで必要壁量が把握できる早見表の整備を行った(※日本住宅・木材技術センターが作製)。
腰壁・垂れ壁を含む準耐力壁などについては、基本的には存在壁量に算入できるものとしている。ただし、必要壁量の2分の1を超えて準耐力壁を壁量に算入する場合には、柱に折損などの破壊が生じないことを確認する必要がある。
準耐力壁などで壁量が少なく、準耐力壁の壁倍率が小さい場合は、四分割法、柱頭・柱脚の接合方法を確認する際に、準耐力壁の影響は考慮しなくても良いとした。ただし、壁倍率が1.5倍を超える場合は、壁倍率を用いた確認が必要となる。
さらに、高い耐力を有する壁に係る壁倍率の上限を引き上げ、5倍を超える倍率が設定できるようにした。暫定措置として、当面の間は高い耐力を有する壁の周囲に与える影響を考慮し、壁倍率の上限を7倍とする。他に、筋かいを入れた軸組の壁倍率や、階高が3.2mを超える場合の柱頭・柱脚の接合方法の検証方法も見直された。
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柱の小径の算定方法については、建築物の重量に応じた柱の小径の算定式を規定。小径が容易に把握できるよう早見表や表計算ツールを整備した。表計算ツールでは、①スギの無等級材を前提として算定、②樹種・等級を選択して算定、③樹種・等級を選択し、柱の小径別に柱の負担可能面積を算定―の3つの中から選択が可能となっている。
■参考資料
「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準の見直し(案)」(PDF)
「新しい壁量等の基準(案)に対応した設計支援ツール(案)」(日本住宅・木材技術センター)
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