東京商工リサーチ(TSR、東京都千代田区)は12月7日、「人手不足」関連倒産について、今年1月~11月の累計が144件(前年同月比132.2%増)と前年同期の2.3倍に増加していると発表。11月は16件(同77.7%増)で、このペースでいくと、2013年の調査開始以降、最多だった2019年(156件)を超える可能性があるとした。
要因別では、「人件費高騰」が54件(前年同期比671.4%増)と前年同期の7.7倍に急増。「求人難」も55件(同103.7%増)で同2.0倍となった。「従業員退職」は35件(同25.0%増)で、2年連続前年同期を上回った。
産業別では、10産業のうち7産業で前年同期を上回った。コロナ禍前から慢性的な人手不足が続く建設業は27件(前年同期比92.8%増、前年同期14件)、また「2024年問題」への対応が求められる運輸業は35件(同483.3%増、同6件)になるなど、労働集約型産業を中心に人手不足が顕著となっている。不動産業は前年同期と同じ1件だった。業種別では、建築リフォーム工事業、とび工事業が各4件、建築工事業、木造建築工事業、内装工事業が各2件で前年同期を上回った。
コロナ禍の需要減少と市場縮小により、2020年から「人手不足」関連倒産は低水準で推移してきたが、経済活動の本格再開で人手不足が深刻化している。人材確保のためには賃上げが避けられないが、財務面がぜい弱な企業では人件費上昇などのコストアップが資金繰りへ影響するケースも多い。賃上げが難しい企業は人材確保が進まず、受注機会の喪失で業績が悪化し、「人手不足」関連倒産が過去最多を更新する可能性が高いと指摘している。
内需依存型の中小・零細企業は業績回復が遅れる企業も多く、賃金格差も深刻さを増している。人件費の上昇を事業収益で賄えるかが、経営上の大きな課題となっている。
同調査は、2023年度(1-11月)の全国企業倒産(負債1000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出・分析した。(後継者難は対象外)
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